第3話  ティッシュペーパー

 私は箱ティッシュの中の一枚のティッシュペーパー。紙の工場で製造されて、今スーパーに陳列されているの。私のティッシュペーパーはブランドの物で、普通のティッシュペーパーより少し高いわ。鼻が高いけど誰も買っていってくれないから、少しだけ寂しい。 


「次はティッシュペーパーだね」


 そう思っていると、誰かが私の所へ近づいてきた。遂に私を買ってくれるようだ。とても嬉しい。中からは全然見えないけど、セレブそうなおばちゃんね。


        *


 それから私は高級車に乗せられて、おばちゃんの家に着いた。二百枚ある中で私は百六十五番目に入っているの。どんな使われ方をするのかしら? 鼻をかまれたり、掃除に使われたり、食後に口を拭かれたりするみたいだけど、なるべく綺麗な使われ方をしたいわ。


        *


 あれこれ考えていると、あっという間に二週間と六日が経過したわ。もうすぐで私の出番がくる。私はどんなふうに使われるのか緊張してきた。百六十四番目のティッシュペーパーが使われて、ついに私はひょこっと顔を出した。とてもきれいで優雅なお家。あれ? なんだか外が騒がしくなってきた。


「どうぞどうぞ。上がってお茶しましょう」


「お邪魔しまーす」


 おばちゃんのお友達が来たみたい。お友達のおばちゃんもとても華やかな服を着ている。すごい綺麗。


「佳子さんの家いつも素敵ね!」


 お友達のおばちゃんが椅子に座りながら言った。


「ありがとうね。お茶とお菓子用意するわ」


「ありがとう。楽しみだわ!」


 おばちゃんがお茶とお菓子を二人分持ってきた。そしておばちゃんが私と百六十六番目のティッシュペーパーを取った。


「これにお菓子包んで食べてね!」


「ありがとう。いただきます」


 私はお友達のおばちゃんの方に行ったわ。クッキーのいい匂いがする。とても幸せ。


        *


 おばちゃん達は一時間程お茶をして、お友達のおばちゃんは帰って行った。そして食器は片づけられ、私はゴミ箱に入った。生まれ変わったらまたこの家に来たいな。私を買ってくれてありがとう。さようなら。

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