羅什13 他高僧との交流 

クマーラジーヴァが亀茲クチャにいた頃、

ヴィマラークシャより戒律を授かった。


そのヴィマラークシャが、長安ちょうあん入り。

それを聞いたクマーラジーヴァ、

喜んで会いに行き、

変わらぬ師への敬意を捧げた。


いっぽう、クマーラジーヴァが

汚れつちまつたことを知らずにいた

ヴィマラークシャは、問うのだ。


「お前はこの地と縁が結ばれて久しい。

 さぞ多くの弟子より崇敬を

 受けておろうな」


クマーラジーヴァは答える。


「この地には、とにかく経典が

 足りておりませんでした。

 そのため私めが多くを訳出し、提示。


 その殆どが私めによることを思えば、

 この地の三千門徒は、私めより

 法を授かった、と言えましょう。


 しかし、しかしです。

 この身は汚れつちまつたので、

 師としての崇敬など、

 望むべくもございません」



また、彭城ほうじょうにいたぁゃιぃ僧侶、

杯度はいどは、クマーラジーヴァが

長安にいる、とは聞いていたのだが、

嘆息し、このように語っていた。


「あのお方と試しに別行動をしてみて、

 もう三百年少々が経とうか。

 来世くらいには、何とか会えそうかな」




初什在龜茲,從卑摩羅叉律師受律,卑摩後入關中,什聞至欣然,師敬盡禮。卑摩未知被逼之事,因問什曰:「汝於漢地,大有重緣,受法弟子,可有幾人?」什答云:「漢境經律未備,新經及諸論等,多是什所傳出,三千徒眾,皆從什受法,但什累業障深,故不受師敬耳。」又杯度比丘在彭城,聞什在長安,乃歎曰:「吾與此子戲別三百餘年,杳然未期,遲有遇於來生耳。」


初、什の龜茲に在るに、卑摩羅叉律師より律を受く。卑摩の後に關中に入れるに、什は至れるを聞きて欣然とし、師敬し禮を盡くす。卑摩は未だ被逼の事を知らざれば、因りて什に問うて曰く:「汝は漢地に大いに重緣有り、法を受けたる弟子は幾らの人有らんか?」と。什は答えて云えらく:「漢境に經律は未だ備わざらば、經及び諸論等を新たとし、多きは是れ什の傳出せる所にして、三千の徒眾は皆な什より法を受く。但だ什は業を累ぬこと障深なれば、故に師敬は受けざるのみ」と。又た杯度比丘の彭城に在れるに、什の長安に在せるを聞き、乃ち歎じて曰く:「吾れ此の子と戲別し三百餘年、杳然として未だ期せざれば、遲きは來生にて遇せる有りたらんのみ」と。


(高僧伝2-13_尤悔)




ヴィマラークシャと杯度との話がひと繋がりな感じになってるけど、これはどう見たもんでしょうかね。杯度は平然と肉や酒をかっくらい、ひょうひょうと謎のブッダパワーを披歴しては死に、別のところでよみがえってまた同じようなことをして死に、そんな感じで何回か復活したあげく南方に消えていったというわけの分からない人。高僧伝にも伝があるのだが「おまえは何を言っているんだ」というキテレツな話でした。日本語解説だと Wikipedia が一番詳しいんでしょうかね。


https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%AF%E5%BA%A6


オモシロ仏僧ではありますが「歴史を追いたい」人間にとってはちょっと本筋から外れまくる人なのでここでは取り扱いません。ただ衣食は適当だったけど女犯の形跡はないので、クマーラジーヴァとの今生での縁が女犯によって断たれた、と認識していたのかもしれません。百万回生きた僧侶みたいな感じだから、三百年というのも輪廻転生での道筋の中で、クマーラジーヴァの前世か前前世あたりで出会い、たまには会ってみようか、みたいな感じだったんでしょう。しらんけど。


仏僧ってこんなの高僧伝に乗せるとか懐の広さ異常だよな……。

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