姚泓5 封爵の是非
兵士らのうち、国のために戦い、
死亡したものには爵位を与え、
その家からの賦役を免除する、とした。
次いで
五等子、五等子男に封じようとする。
いや待ってくださいよ、
この動きを
「確かに東宮の文官武官は、
陛下に忠実であります。
しかしながら、何か功績を
挙げたわけでもございません。
にもかかわらず、この封爵は
いささか、数が多すぎますまいか?」
姚泓は言う。
「朝廷より爵位をもたらし、
あるいは懲らしめ、
あるいは励ますのは、
この国の徳盛んなることを示す証。
私が家の不幸に遭った時、
彼らは私と憂いを同じくしてくれた。
だというのに、その福を
独り占めしておるなぞ、
わが心に愧じずにおれようか!」
あっだめだこいつ。
国ごとと家ごと混同してやがる。
が、その理屈で返されてしまうと、
姚讚としてもうまく返せず、
黙り込んでしまった。
そこに進み出るのが、
「陛下が臣下らの徳に報いんとされる、
これはよろしいお心がけです。
とは申せ、その手の慶事は古来より
年の始めになされております。
封爵の議につきましては、
年明けまでに、
改めてなされるべきでしょう」
ふむ、それももっともだ。
なので姚泓、性急な封爵については
取りやめとした。
胡族数万世帯が反乱を起こし、
また彼らは匈奴の
至る所で略奪を働き始めた。
自らの任地の北部で起こった
この騒動を聞きつけ、すぐさま出動。
平陽で撃退し、曹弘を捕えると、
長安へと連行した。
この乱にかかわった豪族一万五千世帯は、
泓下書,士卒死王事,贈以爵位,永復其家。將封宮臣十六人五等子男,姚贊諫曰:「東宮文武,自當有守忠之誠,未有赫然之效,何受封之多乎?」泓曰:「懸爵於朝,所以懲勸來效,標明盛德。元子遭家不造,與宮臣同此百憂,獨享其福,得不愧於心乎!」贊默然。姚紹進曰:「陛下不忘報德,封之是也,古者敬其事,命之以始,可須來春,然後議之。」乃止。并州、定陽、貳城胡數萬落叛泓,入於平陽,攻立義姚成都於匈奴堡,推匈奴曹弘為大單于,所在殘掠。征東姚懿自蒲阪討弘,戰於平陽,大破之,執弘,送于長安,徙其豪右萬五千落於雍州。
泓は書を下し、士卒の王事に死せるを以て爵位を贈り、永く其の家を復せしむ。將に宮臣十六人に五等子男を封ぜんとせるに、姚贊は諫めて曰く:「東宮の文武、自ら當に守忠の誠を有さんとせるも、未だ赫然の效有らざるに、何ぞ封の多きを受けんか?」と。泓は曰く:「爵を朝に懸くるは、懲勸を來效し、盛德を標明せる所以なり。元子が家の不造に遭いたるに、宮臣は此の百憂を同じうす。獨り其の福に享じ、心に愧じざるを得たらんか!」と。贊は默然とす。姚紹は進みて曰く:「陛下の德に報いんとせるを忘ず、之を封ぜるは是なり。古者は其の事を敬せど、命の以て始むるは須く來春たるべくし、然る後に之を議すべし」と。乃ち止む。并州、定陽、貳城の胡、數萬落は泓に叛き、平陽に入り、立義の姚成都を匈奴堡に攻め、匈奴の曹弘を推して大單于と為し、所在にて殘掠す。征東の姚懿は蒲阪より弘を討ち、平陽にて戰い、大いに之を破り、弘を執え、長安に送り、其の豪右萬五千落を雍州に徙す。
(晋書119-5_政事)
すごいねこの、姚泓載記冒頭でいいやつだよ、と書きながら、ここではもはや状況の帰結を見通そうとする視野が全くない、ただのぼんくらっぷりを示してきてる。いやもう国がヤバヤバ&ヤバな状況で、東宮なんて言う「国内で最も安全な場所」の人間を讃える意味ないですわ。「何やってんだこいつ」としか言いようがない。
姚紹、そんな姚泓のぼんくらっぷりのおかげで重用されてるわけで、大権を握らせてもらいながらも、どうこのぼんくらを煙に巻くかでさぞ頭を悩ませたんだろうなぁ。いやあ、「こんな立派な姚泓さまが、なんで……?」みたいな流れになるかと思ったら、全然そんなことはなかったぜ……どういうことなんだぜ……。
とりあえず晋書の論運びに従えば、「あっだめだ、そりゃ劉裕も付け入るわ」としか思えなくなりました。まって、あの立派な姚泓論からまだ二話しか経ってないよ……?
ところで、
元子:天子的嫡長子。
『詩經 魯頌 閟宮』:「建爾元子,俾侯于魯。」
という情報を手に入れてしまい、姚泓さんについては百歩譲って引用元通りだなと思いながらも、同じあざなを名乗っている桓温さんに対しては真顔&真顔&真顔になりました。えっ……あざなって基本、成人後につけるやつだよね……桓温さん元服前にはパパ喪ってるよね……そのあざな、たぶんご自身で選んでるんですよね? マ? マ???????
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