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「しんのすけは俺に持ってきたんだろ?」
「いえ、向井さんへプレゼントです。」
「はあ?いいからよこせ。今から食べるぞ。」
取り分けている向井から皿を奪うと、柳田は菓子楊枝で一口サイズに切った。
切り口も綺麗なグラデーションになっていて、夜空だけでなく宇宙さえも想像できるような、そんな模様に思わずため息が出そうになる。
「綺麗だな。」
「ですよね。天の川の羊羮なんです。食べるのがもったいな……って、言ってるそばから社長、無理して食べなくても。」
躊躇いもなくひょいと口に入れる柳田に一花は慌てるが、柳田のもぐもぐと咀嚼するその口元や喉の動きを思わず凝視してしまう。
「甘さ控えめで上手いな。」
ごくっと飲み込んだその動きに合わせて、一花は慌てて目をそらした。何だか妙に嬉しい気持ちになったのはなぜなのだろう。
「……お茶淹れますね。」
その気持ちを振り払うように一花はそそくさと給湯室へ逃げ込み、柳田は羊羮をもう一切れ自分の皿にのせた。
一連のやり取りを見ていた向井は静かに笑い、自分も羊羮を口にする。
こしあんと寒天が混ざりあってとても喉ごしがよく、確かに甘さ控えめで美味しい。
まるで柳田と一花のようだと、向井はまた一人可笑しそうに笑った。
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