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17階から49階まではあっという間に着いてしまった。

名残惜しくエレベーターを降りると、柳田はスタスタと歩いていってしまう。置いてかれまいと、一花は早足で追いかけた。


ホテルの入口にはフォーラムの案内表示が出ていて、てっきりそこに入っていくものだと思った一花は、柳田が通りすぎたことを疑問に思って呼び止めた。


「社長、入口こちらですよ?」


「ん?まだ時間あるだろ?」


「ありますけど……トイレですか?」


「しんのすけも済ませておけよ~。」


からかうように言われ、一花は妙に恥ずかしくなりこっそりと顔を赤らめた。

トイレなら会社を出る前に行ってきたし、それならばここで待とうかと歩みを緩めた時だった。


「しんのすけ。」


柳田が急に振り向いたかと思うと一花の手を取り、何事かと一花の心臓はドクンと脈打った。

ぐっと引き寄せられて思わず体が強張る。

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