07
柳田と向井の前に堂々と立ち、一花は丁寧に挨拶をした。
「本日より秘書課に配属になりました、野原一花と申します。至らぬ点などあるかとはございますが、早く仕事を覚え精進して参りますので、どうぞご指導ご鞭撻の程よろしくお願い致します。」
秘書課とは名ばかりの、要は柳田と向井のサポート業務だ。以前は二人社員がいたが辞めてしまい、今は一花だけが配属されている。
「こちらこそ、よろしくお願いしますね、野原さん。さっそくですが、仕事をお願いします。」
向井は優しく微笑みながら鬼のように仕事を与え、柳田は値踏みをするように一花をジロジロと見た。
そして口を開く。
「野原……といえばお前、しんのすけだよな。おい、しんのすけ。」
「…………は????」
呼ばれたのかどうなのかよくわからず、一花はすっとんきょうな声を出してしまった。
「社長、野原さんが困惑していますよ。」
向井に冷ややかにたしなめられるものの、柳田はいたく気に入った様子で訂正する気もないらしい。
「あの、しんのすけって、もしかしてクレヨンしんちゃんですか……?」
「しっくりくるだろ?」
こねえよ!
と喉元まで出かかったのを、ぐっと抑えた。
異動初日早々これである。
一花はこの先の仕事に不安を覚えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます