08

とは言うものの、日々の業務は基本的には向井から指導を受け、鬼のような指示やスケジュールを一花は淡々とこなしていた。


柳田のスケジュール管理やプレゼン用資料作り、車の手配から出張旅費等、細々とした裏方仕事はとても地道で大変だが、一花にとっては得意分野だった。


受付として入口に座っているより何倍も楽しい。もちろん向井から課される指示は難しいものばかりだが、それでも一花は大変にやりがいを感じていた。


容姿端麗でプレイボーイと囁かれる社長が側にいても、一花はなんら興味を示さない。

鬼の向井がギャップ萌えするほどの優しい言葉をかけても微塵も心が揺れない。

鉄の女とはよく言ったものだ。


だが、一花の愛想は言うほど悪くないしきちんと仕事もできる。


柳田にとってその距離感はなかなか心地よかった。


そしてそれは一花も同じだった。


プレイボーイだの何だのと囁かれる柳田は、口調こそ俺様態度なものの、仕事に関しては真面目で一花に甘い言葉すらかけない。

一花を一社員として認めている証拠でもある。


初めこそ戸惑ったものの、言葉遣いや接客マナー、身だしなみはもちろん、勤勉で普段から丁寧な言葉遣いやふるまいを心がけている彼女が秘書に移ることは、なんら悪いことでも畑違いでもなかった。

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