第2話 カメラに向かって脱げ
「大丈夫だって! 陸上部女子だけの鍵垢だから」
「そう言う問題じゃないっての!」
思考能力を取り戻した俺は、あいも変わらずヌード写真を要求する妹を言いくるめる戦いに明け暮れていた。
「そもそもSNSにはだか画像をアップするとかダメなんだよ、色々とアウトなんだよ」
「えー、うそだぁー」
「うそじゃねぇよ! 法律的にアウトなんだよ! 逮捕されたりするんだよ!」
「お兄ちゃんが?」
「お前がだ!」
この不毛な争いに終止符を打つべくネットで齧った知識の断片を繋ぎ合わせて妹の説得を試みているのだけど・・・
俺自身の知識が曖昧なので口にする言葉には重みが無く妹を納得させるという一大事業は難航している。
「なんか嘘くさいんだよなぁ、お兄ちゃんの言葉って」
「嘘なんて言ってねぇよ! とにかくダメだ」
「じゃあ投稿しなきゃいいんだよね? お兄ちゃんのヌード写真」
「いや、なんでお前は俺のヌード写真にこだわるんだよ」
ネットへの投稿は色々と危険だと理解してくれた妹だったが、俺に対しての全裸要求はまだまだ引っ込めるつもりはないらしい。
「だってお兄ちゃんのヌードじゃなきゃダメなんだもん」
妹はそう言って顔を下に向けてしまう。その仕草に少し恥じらいのような物を感じて、こちらも攻撃の言葉を出しづらくなる。
「いや、お前、俺達兄妹だぞ?」
勢いの弱まった妹に対して強く出過ぎないよう細心の注意を払いながら言葉を紡いだ。
「そんなの当たり前じゃん! バカじゃないの?」
ーー!!
「バカはお前だろ! 実の兄にはだか見せろって迫ってきやがって!」
結論から言えば妹の勢いは弱まっていなかった。むしろ溜め込んでた。
「そんなに嫌がる事ないじゃん! 兄妹なんだし! 自意識過剰過ぎ!」
「なんだと・・・」
突然ヌード写真を撮らせろと言われて拒否しただけなのに、自意識過剰だなんて言われて頭に血が昇る。
「じゃあ、お前もはだかになれよ。ソレなら俺もはだかになってやる。公平だろ」
売り言葉に買い言葉。言ってはイケナイはずの言葉を思わず口に出してしまった。
流石にマズイと思い訂正の言葉を口にしようとしたが妹の方が俺よりもわずかに早く口を開いた。
「別にいいよ。それでヌード写真撮らせてくれるなら。ついこの前まで一緒にお風呂入ってたしね。まぁ、あの頃よりは少し胸が大きくなってるけど」
ーー!!
予想を超えた妹の大胆な返答に動揺し次に言うべき言葉を見つけられず「うぐッ」と声を詰まらせる。
「交渉成立?」
妹からの言葉が俺を追い込む。このピンチを乗り越えるアイデアが浮かばない。俺の脳細胞はフル回転しているはずなのに、だ。
そんな中、俺の視覚野だけが突如リブートし妹の行動変化を察知した。
「お前、何やってんの?」
俺は妹からの問いかけの返答を一時棚上げにし、いま目の前で妹が行っている行動の内容を問いただす。
「ん? メッセ書いてる。お母さんに。お兄ちゃんにはだか見せろって迫られたって」
「やめろーーー!!」
俺の敗北が決まった瞬間だった。
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