市
魔王の前日譚
胸に大剣の一閃。
焦燥。激痛。痛苦。憤激。喪失。虚脱。屈辱。憎悪。怨嗟。
剣の軌跡の向こう側に人間が立っている。
凡庸な人間だ。此処に到るまでに無数の同胞を殺戮して来た人物とは到底思えない。体格は村人と大差ない。本人よりも装備している武器や防具の方が印象に残るような有様。身に纏う覇気もなく、風格は一兵卒にも劣る。
しかし、瞳に宿る意志が、毅かった。
徐々に視界が闇に墜ちていく。それなのに己を見つめるその瞳は、暗闇の中でいつまでも、星のように輝いている。
見たくない。だが目は瞑れない。
「……」
口も動かない。
手も動かない。
指も、足も、何も動かない。
この身体はもう動くことはない。
――もう死んでしまっているから。
恐怖。
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