竜王バハムートとの遭遇
夜の事だった。
「シオン先生! ヴァイスさん! 四姉妹の方々!」
ユエルに起こされる。
「どうしたのですか!?」
「来てください! 大変なことが起きたんです!」
「大変な事!?」
「良いからこっちに来てください!」
ユエルに連れられて、私達はどこかへと向かう。
◇
「夜、歩き回っていたら大変なものを見ちゃったんです」
「なぜ歩き回ってたんですか?」
「聞かないでください!」
ユエルは顔を赤くして叫ぶ。
「きっとおしっこなのだ!」
ティータは叫ぶ。
「んだ、んだっ!」
「違います!」
「じゃあ大きいのだ!」
「うるさいです! 違います! ち、ちがいますーーーーーーーーーー!」
ユエルは顔を真っ赤にして叫んだ。図星のようだ。
「ユエルさん。排泄行為は生物にとって当然の行為です。恥じる必要はありません」
「シオン先生まで! 真面目に言わないでください! だから違いますってばーーーーーーーーーーー!」
それはそうと私達は滝のある湖のような場所へとたどり着いた。
そこには一人の美女がいた。黒髪をした美女。妖艶な美しさを秘めた絶世の美女。彼女は服を脱いだ。芸術品のような美しい裸体を惜しげもなく晒し、水浴びを始めた。
「シオン先生! あまり見ないでください!」
「別に私は性的な目で彼女を見ていたのではありません! 分析をしていたのです!」
というより黙らないか、ユエル。気づかれたらどうする。
「おかしいとは思いませんか? こんな人気のない森の中に女の人がいるんですよ。
それになんか雰囲気が違うし。だから私はもしかしたらバハムートさんなのではないかと推測したんです」
「ユエルさんにしては珍しく頭の回った推察です」
「やりました! シオン先生に褒められちゃいました!」
「さっきの褒めてたのか?」
「事実を知らない方が幸せな事もあります」
アクアは答える。
「お、お母様……」
ヴァイスは絶句する。その一言だけで水浴びをしているのが竜王バハムート。彼女が人の形をしている時の姿だと認識できた。
「誰だ? そこで余の沐浴を覗いているネズミは」
「気づかれましたか。ユエルさんがうるさいせいですよ」
「わ、わたしのせいですか! がーん!」
「まあいいです。このまま見逃すわけにはいきませんでした。どうせ対峙する事になったのです」
私達は隠れていた草木から姿を現す。
「ヴァイスか。それに姉妹の娘達。それとなんだ? 人間と獣人か?」
「お母様! い、いえ、竜王バハムート! あなたはやはり狂ってしまったのですか!?」
「狂った!? 違うな。余は力に目覚めたのだ! 力のある者が暴力で弱者をねじ伏せ、屈服させる! 力こそが全てを統べる理だ! だから余は力による制圧の為、武力の行使を始めたのだ!」
「間違っています! そんなもの! 自分達の愛した国民を傷つけていい道理はありませぬっ! 竜王バハムート! あなたの使命は国民をその力で守る事ではなかったのですか!?」
「うっ、ううっ! だっ、だまれヴァイスっ! この小娘めがっ!」
バハムートは頭を抱えた。頭痛がするようだった。
「間違いありません。竜王バハムートは狂竜病にかかっております」
「お母様……やはりあなたは」
嘆くようにヴァイスは呟く。
「黙れ! 黙れ! ネズミどもめがっ! 余が力を持って貴様達をねじ伏せてやろう!」
漆黒の光が放たれる。変化(トランス)だ。突如として、漆黒にして巨大な竜――バハムートが湖に姿を現す。その存在はあまりに大きく、雄大なはずの湖が一気に小さな池に見えた程である。
「皆様! 気をつけてください! 竜王バハムートは間違いなく強敵ですっ!」
「「「「はい!」」」」
グウウウウウウウウウウウウウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
森が震撼するような咆哮が聞こえてくる。こうして竜王バハムートとの戦闘が始まったのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます