「ヒーラーの方が安上がりだ!」と追放されたが私じゃないと患者さん死にますよ? ~治せないから戻ってこいと言われても『ドクター』スキルでもあなたたちは手遅れです。あ、患者さんはこちらでお待ちください~
【ブラックギルドside】アルバートとレイドール役員に叱責される
【ブラックギルドside】アルバートとレイドール役員に叱責される
「アルバート殿、役員がお待ちです」
「ひ、ひっ! い、嫌だ! 俺は行きたくない! 嫌だ!」
「レイドール殿も会議に出席お願いします」
「死ぬのは嫌だが、役員連中に責められるのも生き地獄であるぞ」
「お二人とも、覚悟を決めてください」
こうして二人は役員会議。というよりも役員裁判、尋問に出向く事となる。
◇
「一体どういう事だ! アルバート殿! いやアルバート! そして獣人貴族レイドール!」
「「ひ、ひいっ!」」
「もはや言い訳はできぬぞっ! 貴様が約束していた一週間はとっくに過ぎている!」
「ギルド員のストライキ問題も解決していない!」
「これでは新規にクエストを受注し、利益をピンハネできないではないか! 当ギルドの大きな損失であるぞ!」
「さらには獣人貴族レイドールと結託し、獣人国を植民地化させる計画はどうした!」
「進歩が聞こえてこぬぞっ! 一体どうなっている!」
「「ひ、ひいっ!」」
アルバートは観念した。レイドールも同席しているのだ。もはや計画は順調だとか、ストライキの解消は目前だなどと白を切るのが困難になってきた。
以前についた虚勢が最後の一枚岩である。これ以上の言い訳は通用しない。
「正直に申せ! もはや貴様の言い訳など聞きたくない!」
「も、申し訳ありません! 役員様方!」
アルバートは頭を下げた。それも床に付ける程深く。もはや土下座であった。
「ストライキは治まりそうにもありません!」
「ほう、それはなぜだ?」
「クエストに出たギルド員が幾人も負傷しました。そしてその怪我や病を治せるのは【ドクター】スキルを持ったシオンだけだと判明しました!」
「なんだそれは!」
「だったらその【ドクター】とかいうスキルを持った者を他に連れてくればよいだろう!」
「そ、それが叶わないようです!」
「ほう。それはなぜだ? 申せ」
「それがヒーラー学院の学院長に聞いた限り、そのようなスキルを持ったのはシオンただ一人のようです!」
「なんだと!」
「ではシオン以外に重病を治せる者はいないというのか!」
「そんな貴重な人材を追い出したのか! アルバート! この責任! どう取ってくれる!」
「く、くうっ!」
シオンを追い出した時、役員も一致団結して賛成していたではないか。間違いなく自分達の落ち度もあるはずなのに。
それなのに責任を逃れ、アルバート一人に罪をなすりつけようとしている。
いくらブラックギルドの役員とはいえ、人間としてやっている事があまりに屑ではないか。
弱い立場になって初めてアルバートはその痛みを味わったのである。
「それで獣人国に疫病を蔓延させ、植民地化する計画はどうなっている?」
「獣人貴族のレイドールもその場にいるのだぞ。もはや言い逃れはできぬっ!」
「そ、それが実はその計画は難航しております!」
「ほう!? それはなぜだ!? 申せ!」
「は、はい! それもまたシオンが絡んでいるのです!」
「シオンだと!?」
「はい! シオンは今、獣人の国でドクターとして働いているそうです。そして、疫病に侵された獣人を治療しようとしています!」
「それは本当かな? レイドール」
「は、はい! その通りです! あ奴は突如現れ、重病の王妃を治療して見せました」
「ほ、ほうなんだと!」
「は、はい! それも聞くところによると一瞬で治療したそうです!」
「な、なんだと! 一瞬で治療しただと!」
「このままでは医療の独占ができず、獣人国を支配できないと思った私はあやつを暗殺しようとアサシンを仕向けました」
「暗殺? そ、それでどうなった?」
「失敗しました。その後はネクロマンサーやドラゴンテイマーを差し向け、始末しようと試みましたが立て続けに失敗しています」
「なんだと! ネクロマンサーにドラゴンテイマーまで!」
「シオンめ。あやつは何者なのだ!」
「確かにドクターなどという者、今まで聞いた事もありません。ユニークなスキルを持っているようです」
「報告は以上であります! 何卒ご容赦を! 命ばかりはお助けください」
「私もお願いします! どうか寛大な措置を! 獣人国に戻っても死刑にされるだけです! どうかお願いします」
「いいだろう! 貴様達を殺すことは避けてやる」
「「ありがとうございます!」」
「だが、我が『ブラック・リベリオン』の計画が再び軌道に乗るまで手伝ってもらうからな」
「もはや医療独占による支配も期待できない。何か別の方法を模索する必要があるな」
「ええ……」
計画は大きく難航した。しかし執念深いブラックギルドである『ブラックリベリオン』はまだ自らの野望を諦めているわけではなかったのだ。
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