【ブラックギルドside】役員たちが苛立ち始める

「遅い……」


 役員会議での事だった。


「アルバートの奴め。あ奴は何をやっているのだ」


「全くです……何とかすると意気込んで『ブラック・リベリオン』を出て行ったものの、この調子では先が思いやられます」


 役員たちは溜息を吐いていた。


「このままでは拉致があきません」


「ええ……」


「闇のギルド員に連絡を取りなさい。あの馬鹿(アルバート)がどこで何をやっているのか、調査し、ここに連れてきなさい。野たれ死んでいたら仕方がありませんが……」


「はい」


 ◇


「さむい……さむいぞ」


「ええ。寒いです……」


 二人は留置場で凍えていた。留置場には他の容疑者も収容されていた。いわば相部屋である。


「ああっ! もう! ムラムラしてどうしようもねぇ! ここじゃ女ともヤれねぇしよ!」


「「えっ?」」


 一人の大男の獣人が立ち上がった。


「へへっ。もうこうなったら、男でも構わねぇよ」


 獣人が舌なめずりをする。


「い、いやだぁ! 俺はそっちの趣味はないんだ!」


「わ、私もです! い、いやだぁ! お、お尻はやめてくれっ!」


「心配するんじゃねぇ。口もしっかり使ってやるからよ」


「そういう事ではない!」


「い、いやだ! 男に尻の穴を掘られるくらいなら! 死んだほうがマシだ!」


 その時だった。突如、留置場の鍵が開かれた。


「き、貴様は! ぐあぁ!」


 獣人は昏倒させられる。現れたのはアサシンだった。シオンを襲った闇のギルド員である。


「お、お前は暗殺者(アサシン)の」


「アルバート殿、レイドール殿、役員がお呼びです。付いてきてください」


「ありがとう! 助かった!」


「ええ! 大変助かりました! このままでは私は死刑でしたので!」


「いいから行きますよ。急いでください」


 こうして二人は留置場から脱走していった。


 ◇


「レイドールさんとアルバートさんが脱走した?」


 私は使用人からその情報を聞いた。


「はい。そのようです」


「大変です! シオン先生! どうしましょう!?」


 ユエルは大慌てをしていた。


「放っておきましょう」


「ええ!? 慌てないんですか」


「もう自白剤で聞きたい事は粗方聞きましたので。彼等の人質としての価値はあまりありません。脅したところで『ブラック・リベリオン』は非人道的な組織です。どれほど行動を抑圧できるかわかりません。恐らくほどんど意味がないのではないでしょうか?」


「そうですか! なら大丈夫そうですね!」


「そんな楽観的にとらえられても困りますが。恐らくはあの時のアサシンが暗躍したのでしょう」


 私は眼鏡を上げる。


「ただ、このまま『ブラック・リベリオン』を野放しにしておくわけにはいきません。獣人国を貴族と結託し、疫病を流行らせ、そして植民地化し利益を貪ろうとした

罪を償わせなければなりません」


 ブラック・リベリオンは強大な力を持っている。だが、それは一国程の力ではない。獣人国の力があれば必ず連中を打倒できるはずだ。


 私はそう考えていた。










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