「ヒーラーの方が安上がりだ!」と追放されたが私じゃないと患者さん死にますよ? ~治せないから戻ってこいと言われても『ドクター』スキルでもあなたたちは手遅れです。あ、患者さんはこちらでお待ちください~
【ブラックギルドside】アルバート、シオンの代わりになる存在はいないと気付く
【ブラックギルドside】アルバート、シオンの代わりになる存在はいないと気付く
ブラックギルド『ブラック・リベリオン』のギルド長であるアルバートはレイドールとの通話を終えた。
滞りなく進んでいたと思った獣人国の疫病化計画にとんだ邪魔が入っているようだ。しかもその横やりがクビにしたあのシオンという【ドクター】からきているというのも実に歯がゆい事であった。
あやつめ。どこで何をしていると思っていたら獣人国にいるのか。余計な真似をしおって。我々の計画に水を差すなど。
「これから役員会議だな」
アルバートは役員会議へと出向く。
◆◆◆
役員室で役員を招いた会議が行われる。
「計画はどうだ? アルバート殿」
「はい。実に順調であります」
シオンの横やりが入り、獣人国の疫病化計画が難航している事、そしてヒーラー達が重病化したギルドメンバーを治す事ができずに四苦八苦している事をプライドが高いアルバートは役員達に黙っている事にした。
「そうか。順調であるならば何よりだ」
こうしてその日の会議は誤魔化して終わりにさせた。
◆◆◆
「くそっ! 何とかせねばっ! なんとかっ!」
アルバートは焦っていた。まず解決しなければいけない問題は二つである。まずひとつ『ヒーラーでは治せない疫病、重症患者の解決』次に『獣人の国にいるシオンの抹殺、排除』である。この二つを解決しない事には、アルバートのギルド長としての立場も危うい。それ故に憤っているのである。
「ともかく、やるしかない! やるしか!」
そこでアルバートは考えた。他に【ドクター】なるスキルを持った人物がいるであろう。その人物をギルドに引き込み、重症者を癒す。
そして獣人の国にいるシオンを抹殺する。
それがとりうる最善の選択肢だ。
とりあえずアルバートはヒーラー学院に【ドクター】スキルを持った人間がいないか、聞きに行く事にした。
多少値が張っても獣人国を植民地化する事で十分お釣りが来る。アルバートはそう考えたのである。
◆◆◆
「はい。それでギルド『ブラック・リベリオン』のギルド長。アルバート様。当学院に何の御用でしょうか?」
アルバートは学院長との面会を求めた。ブラック・リベリオンがあるのはデュランダルという名の王国である。そこには優秀なヒーラーを何人も排出しているヒーラー学院というものが存在した。
「学院長にお尋ねしたい事があるのです」
「はい。何でしょう?」
「ヒーラー学院に【ドクター】スキルという、スキルを持った人物がいらっしゃいませんか?」
「【ドクター】スキルですか? そんなスキルを持った人物は当学院には一人としておりませんよ」
「な、なんですと!? 一人もいないのですか?」
「はい。他所の学院に行っても恐らくは同じような返答かと思います」
「くっ」
「ふむ? 待てよ」
「何か思い出されましたか?」
「風の噂ではそのスキルを持った人物に一人だけ心当たりがあります」
「だ、誰ですか! その人物とは! 教えてください!」
「シオン・キサラギという人物です。しかし、おかしいですね。シオンさんは確かアルバート様のギルドで働いているのではなかったのですか?」
「くっ! ううっ! どいつもこいつも。どうしてここでも奴の名前が出てくる! おかしいではないかっ!」
「どうかされましたか?」
「い、いえ。なんでもありません。少し取り乱しました」
アルバートは平静を取り繕うが内心穏やかではなかった。
こうしてアルバートは【ドクター】スキルを持っているのが世界でただ一人、シオンだけであるという事に気付いたのである。
◆◆◆
とぼとぼとヒーラー学院から【ブラック・リベリオン】に帰ってきた時の事だった。
「た、大変です! ギルド長!」
秘書がわめきたてる。彼女はアルバートに仕え、色々と雑務をやってくれる女性である。
「なんだ? どうした? 何があった?」
「ストライキです! 医療体制に不満を持ったギルドメンバーがストライキを始めました!?」
「な、なんだと!!」
ストライキだと。まずい! これでは役員の耳にまで入ってしまう。ヒーラーでは重症者を癒せないという事。獣人国にシオンがいるという事までバレてしまうではないか。
「まずい! これは非常にまずいぞ!」
ギルド長アルバートは猛烈に焦っていた。
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