王城の中に仮設の診療所を作る

「よしっと」


 私は王城の空き部屋の模様替えを始める。獣人国が用意する正規の診療所は今から建設する予定だそうだ。だからそれまで暫定的に患者を診療する、診療所を作る必要性があった。


「何をするつもりなんですか? シオン先生」


「ここに仮設の診療所を作るんです」


「診療所ですか!?」


「はい。診療所です。仮のものですが」


「先生! 私も手伝わせて下さい!」


「はい。じゃあ、そこの椅子を並べてください」


「はい!」


 私達は椅子を動かしたり、ベッドを動かしたり、カーテンレースを移動したり、待合用のソファーを持ち運んだりして、即席の診療所を作った。


「できた」


「凄いです! 先生! 立派な診療所です!」


 ユエルは感激していた。


「さて。これで患者様をお受けできる下地はできました」


「はい!」


「それではユエルさん、制服を着てみてはくれませんか?」


「制服ですか?」


「ええ。ドクターにはドクターの。そしてナースにはナースの制服があるのです」


「はい! んっしょっ!」


「わっ! なんでここで脱ぎだすんですか!」


「ええ? なんでって、シオン先生が着替えろって言ったんじゃないですかっ!」


 私がいるのにユエルは躊躇いなく服を脱ぎ始めた。


「誰が私の目の前で着替えろって言ったんですか! そこにカーテンがあります! カーテンに隠れて着替えてください!」


「はーい!」


 ◆◆◆ 


「わー。これがナース服ですか」


 ユエルはナース服に着替えた。


「どうですか? 先生! 似合っていますか?」


「ええ。大変似合っていますよ。ユエルさん」


 似合いすぎていて、色々な意味でやばいと思われた。ナース服とはなぜか性的な衣装だ。


「今日の準備はこれくらいにしましょう。実際に患者を入れるのはしばらく後です」


「はい! シオン先生!」


「今日は疲れましたし、もう寝ますか」


「はい!」


 こうして私達はその日の業務を終えた。







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