ヒット作に学ぶ 最愛



 はい。またドラマですね。今期のドラマです。現在、二話放映されています。ドラマに大ヒット作と言いづらいのは、今後の展開によっては駄作になってしまう可能性も秘めているため。でも、ちょっと調べたら、今のところ95%の視聴者が高く評価してるみたいです。


 一話め、サスペンスドラマだから、とりあえず見たんですが、そのとき、東野圭吾原作かな? と思ったほど、出来がよかった。どうやら原作なしみたいです。昨今のテレビドラマでは原作なしは珍しいですよね。原作なしでここまでこみいったプロットは素晴らしい。


 さて、一話までのネタバレふくみます。かんたんにあらすじ。一話めは主演の吉高由里子演じるヒロイン、りおを好きな男子(名前おぼえてない)の視点で描かれてます。二話はおもに、りお視点でした。


 陸上が盛んな大学の学生寮で、寮母の仕事をしてるバツイチ父と、それを手伝う女子高生の、りお(漢字わからない)。弟のゆうは父の再婚相手の生んだ子どもで、りおとは片親違い。パニック障害? か何かの持病あり。


 さて、りおは視点人物の男子が好きです。視点男子もりおを好きです。両片想い。視点男子は陸上部の選手で、寮生でもある。


 ところが、りおの父が所用で帰りの遅い夜。りおは薬剤師になりたい夢があるので、寮で勉強をしている。


 その夜、寮をたずねてくる学生Aがあり、コイツが問題。寮生たちと飲み会をして、いつも騒いでいる。寮で飲酒じたい禁止のようだが、じつはその裏で違法薬物(睡眠剤のようなもの?)を使用している。Aはそれを女の子に使い、性的暴行の上、裸の写真を撮るというゲスのなかのゲス。寮生の何人かが、これに関与。


 りおはコイツが来るのをよく思ってなかったんだけど、Aは自分でもその認識があり、りおの口をふさぐために薬物を使用。眠らせたところを暴行……?


 りおは途中で意識がなくなります。気がつくと父がいて、あきらかにようすがおかしい。「ごめんな。もうちょっと早く、お父さんが帰ってたら……」などと言ったり。


 翌日、りおは自分が昨夜着ていた服が血だらけになっているのを見つける。


 何かがあったと不安に思うなか、父はとつぜん死にます。あの夜の謎は永遠に闇に葬られた……かに見えた。


 えーと、その十五年後? Aの父親が死体で発見され、りおと初恋男子は殺人事件の容疑者と、それを捜査する刑事という立場で再会する。ドラマの冒頭は、ここから。


 このあと、二人の恋愛や事件の謎などがからみあっていくわけですが、このドラマの大きな特徴の一つに、現在と過去が平行的に進行する、というのがあります。


 わりとしばしば回想という形で、寮時代が大きく描かれるんですね。

 二話めでも、りおが寮を出て実の母親のもとで暮らすさまが長々と描かれます。

 今のところ、現在の描写は回想のあいまに、ちょっとずつ、はさまれていく感じ。


 現在の状況、過去の出来事が、ちょっとずつ明かされていくわけです。たぶん、最後は過去の謎(Aの失踪事件)がすべて解けて、現在の事件(Aの親父の殺人事件)につながっていくんでしょうね。


 最近、東京リベンジャーズなどもそうですが、まず現代で謎が提起され、それを解くために過去へ戻るって手法がよく使われますね。じっさいに時を超えるかどうかはともかく。


 じつは、これ、僕は前からやってたんですよ。

 ワレスさんの『墜落のシリウスシリーズ』は、必ずその形態をとってます。もともと小説上達のために、あえて複雑な書きかたにチャレンジしてた話だったので。


 このシリーズは、過去に起きた事件、現在起こっている事件が交互に同時進行で進み、ラストにその両方がつながって謎が解ける、という形式になってます。とくに過去の事件でひきずっていた『想い』が昇華するって形ですね。それによって、主役は少しずつだけど、今と向きあい前進することができる。


 この手法はたぶん、読むほうにも多少、負担がかかるんですが(いっきに読まないと前にあったことを忘れてしまうとか、ちょっと複雑で理解に時間がかかるとか、読み流せないとか)、それ以上に書くほうは大変です。

 二つの事件を同時進行させるので、それぞれの伏線をおぼえておいて、あとでちゃんと回収しないといけないわけですから。


 ただ、回収が成功すると、単純に一つの事件を解決するより、爽快感は強いでしょう。何しろ、二倍の量の伏線がいっきに回収されていくんで。展開はフルスピードです。


 前から順番に書くのが苦手な人は、ラストの解決前まで、二つの話をそれぞれ別個に書いておいて、あとから何話かずつに分割し、交互につなげていくって形でもいいかもしれません。そのあとラストのシメを書く。

 僕は前から順番に書いていきますが。そのほうが過去現在の各パートに、相互に影響できるので。


 ミステリーの前半は、とにかく伏線をバラまくことについやされます。のちのち大事になってくることも、さりげなく日常生活のなかにひそませて書くことになるので、読んでるほうとしては、これと言った事件が起こらず、退屈な部分です。


 ここで離脱していく人は多いでしょうね。なんだこれ、なんにも事件なくて、つまんないと。

 ましてや、二つぶんの話の伏線だと、なおさら。


 それをふせぐためには、二通りの手があります。

 一つは、どちらかの事件のショッキングな場面を冒頭に持ってくる。


 最愛なんかは、これですね。一話めの冒頭で主役のりおが殺人事件の犯人として捕まる……というところから始まる。パトカーに乗せられる吉高由里子が髪をかきあげると、指さきから真っ赤な血が白いひたいにベッタリと……こういう演出、美しいですね。インパクトもある。また、吉高由里子って、そういうの似合うから。


 二つめのパターンとしては、前半部分に事件とは関係なくてもいいので、読者の興味をひくことをとりいれる。


 最愛では、これが大学生と女子高生の純愛ですね。二人が惹かれあってること、でも思いきって打ちあけられない。そういう青春特有のじれったさを出してました。


 そこらへんで視聴者の気をひきながら、じょじょに事件が加速していく……。


 はい。最愛は2パターン、どちらも採用してましたw

 どおりで面白いわけだ!


 ちょっと凝ったミステリー書きたい、というときに参考にしてみてはいかがでしょうか?


 最愛、このまま最終回まで、良質なサスペンスであり続けてもらいたいものです。

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