情景描写の練習をしよう



 以前、三大描写について書きました。コメントをいただいた感じでは、やっぱり情景描写が一番苦手な人が多いようです。近況ノートを読んでも、たいていの人は風景を描写することがどうしても、うまくできませんと書かれてる。


 ところで、こんな言葉を聞いたことないですか?

 絵描きは一日描かないとデッサン力が落ちる、と。


 これねぇ。ほんとですよ。僕はイラストも描くので、毎日描いてたころは、ちょっと難しいポーズなんかでもスラスラ描けたなぁ。


 いや、それはいいんですよ。

 何が言いたいかと言うと、これって、小説にも言えることだなぁと。

 皆さん、なんらかの理由で数ヶ月、数年など、長期間において小説を書けない、または書きたくないなどの時期はありませんでしたか?

 その後、久々に小説を書いたとき、「あれ? なんか、うまく文章が書けない?」となったことは?


 僕は何度か経験しました。ほんの一週間書かないだけでも、文章のノリが悪くなりますよね? 今は休日にだけ書いてるので、ふつうに三日間くらい書かないことはよくあります。三日あいてるだけでも、書きだしは固いですよねぇ。そのあと、じょじょにノッてくる。連休で続けて書くと、前日よりスムーズに筆が運ぶ。

 こういう現象は誰にでもあることじゃないですかねぇ?


 文章を書く場合のデッサン力に相当するのが、情景描写なんじゃないかと思うんです。

 だからこそ、語彙力がもっとも影響する部分であり、皆さんが苦手意識を持つところ。


 でも、デッサン力ってことは、鍛えれば上達するってことですよね? 美大生は毎日、スケッチの課題があるらしい。って、前もこのエッセイで書いた気がしますが。


 さて、じゃあ、どうやってそのデッサン力をあげよう?

 絵はさ。描けるよね。

 でも、小説は? 小説は文章で描くんだよね?

 うん。だから、文章で描く練習……。


 語彙力? それをあげるには、とにかくたくさんの言葉を情報として得る、記憶に刻みつける、文章に応用する、という手順が必要になる。

 誰だったかが近況ノートでテンプレを斬ってるときに、「辞書を丸々一冊読め!」って言われてましたね。


 僕も辞書から知らない単語をノートにぬきだして記憶に刻んでたので、効果があることは知ってます。でも、みんながそれ、やりたいと思う方法ではない。


 じゃあ、練習っていうのは?

 そうですね。

 毎日、またはヒマなときだけでもいいんですが。毎回、十五分ていどでできる練習です。


 美術のスケッチと同じことを小説でするわけですね。

 毎回、課題を決めます。

 たとえば、『犬』

 これを数行から十数行で表現します。


 犬。それは人類の最初の他種族の友であり、現代もずっと我々のとなりにいてくれる可愛いペット。野生の狼を飼いならしたことから、しだいに家畜化され、人類に従順なが誕生した。


 と書く人もいれば、


 ワンと鳴く生き物。モフモフの二大代表格。もう一方はニャンと鳴く。茶色いのや白いのや大きいのや小さいのがいて、犬種はわんさか。ワンなだけに。


 と書く人もいる。

 なんなら、


 ワン。ワワン。ワンワンワン。

 ワオーン!

 ワン? クーン、クーン。

 キャン!


 みたいな人も。

 描写になってないなぁw


 もっと別の書きかたをする人もいる。当然、書き手の数だけ違う。それが描写というもの。


 我が家の王子様はトイプードルのマルちゃんです。マルちゃんは茶色い巻毛がふわふわして、つぶらな黒い瞳をして、わたしを見るとピコピコ尻尾をふります。と書く人だっている。


 こんな感じでですね。

 自分で決めてもいいし、近しい誰かに決めてもらってもいいので、お題を描写する。できるだけ毎日。余裕がある人は複数回。


 さっきのように一つのお題に対して何度も挑戦するのもいいかもですね。案外、もうダメだ。書きつくしたと思っても、しぼりだせば、それまでの自分にはない新たな表現を見いだすことができるかもしれません。人間って追いつめられると意外な力がどこからか出てきたりするので。

 現に犬の例文で、例文1はこれまでの僕にありがちだったけど、例文2はちょっとヒネリがあったので、自分の知らない自分の側面を知れる可能性が。


 犬、猫、鳥、蝶、セミ、カブトムシ、ひまわり、サクラソウ、藤棚、ヨット、カヌー、パーティードレス、タキシード、レースのカーテン、星、なんなら金星、木星、海老、イカ、タコ、邪神!w

 なんでもいいです。じょじょに抽象的なものに移行していってもいいですしね。


 いろいろ書くことによって、表現の幅がひろがっていくことでしょう。たぶん。

 小説のなかで、その描写を使ってもいいし、ただの習作として自分だけでひっそり続けてもいい。


 たまに誰かにお題を出してもらうのはいいかも。自分の思いつかないような描写をしなければならないことになるかもだし。何人か知り合いの書き手さんたちと、同じお題に挑戦して見せあうのもよさそう。


 じつは、自分ではこの方法をやったことないんですが(いつも自分でやってないことを提案する悪いかーくんw)、これは一回にかかる所要時間が短めだし、わりとよさげじゃないですか?


 何より、ストーリーが必要ないので、純粋に文章を書く練習になる——と思うのです。

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