三大描写以外の描写って?
情景描写、行動描写、心理描写。
その三つ以外に該当する描写ってあるのか?
ない? なさげ? ないような?
いや、ある!
まず、設定描写ですね。
たとえば、SFジャンルで、しかも本格的なやつだと、世界観だけでもかなり凝ったものになります。
設定描写って、風景なわけではなく、キャラが行動してるわけでもなく、もちろん、誰かの心情を表しているわけでもない。
例文A。
この世界は、一千年前に崩壊を始めたという。
世界を統べていた神族がいっせいに、この世から消えたからだ。
神族とは人類によく似た、だが、人類にはないある力を持つ亜人種だ。
人は神族とおおむね、うまく共存していた。いや、できていると信じていた。
一千年前の、その瞬間までは——
こういう感じのやつですね。これ今てきとうに考えました。続きを読みたいと思いましたか? ちょっと硬いですよね。冒頭からいきなり設定描写が続いてるからです。
とくに異世界ファンタジーを書かれてる人に要注意なのが、この設定描写。ファンタジーも凝った世界観にすると、やたらと設定が増えてしまいます。書きなれてない人は、それを冒頭で全部、説明してしまおうとする。
以前、『冒頭のコツ』っていうエピソードで書いたことと重複しますが、冒頭で説明ばかりされると、正直、読む気が失せます。読者は事件が起こるのを、物語が始まるのを待っている。
なので、冒頭はとにかく、一行でも早くアクションをとりいれること。まずキャラを動かしてからでも、世界の説明は遅くない。
というよりですね。
ほんとにうまい書き手さんは、設定描写が適度に小出しで出てくるんですよ。
最初はなんとなくわからないなりに読み進んでいて、〇〇ってなんだろう? そろそろ知りたいと思うと、ちょうどまさにその瞬間に説明が入る。それも長々とじゃない。せいぜい五行から十行ていど。必要最低限の量。
ええー? でも、独自な世界観なんだから、読者にちゃんと知ってもらわないと。説明しないといけないこと、たくさんあるんだけど?
そんなときはですね。
世界観の一部は、風景で表現できる。
たとえば、さっきの説明で始まった世界を再利用して、例文B。
今日も虹の空からマナが降ってくる。無数の七色の光の玉が風に溶けていくこの景色が、レランは大好きだ。早朝にしか見ることのできない、夢のような絶景。
「ねぇ、見てよ。ロラン。今日はマナがあんなに空いっぱい舞ってる」
「ああ。ほんとだね。きっと、虹のむこうで神様が歌っているんだよ」
「千年前に消えたっていう神様? そんなの、今もいるの?」
「神様は私たちのことをいつも見守ってくださっているよ」
「ふうん」
みたいな。
この会話のあとに例文Aを続けたほうが、なんとなく読みたい気がしませんか?
出だしが情景描写でありながら、設定描写でもあり、そして、この世界独自の用語があれこれ出てくることによって、それがなんなのか、読者は気になる。
設定描写のコツは、とにかく必要なときに必要な分量だけ。小出しがベスト。
上記のように会話のなかで説明させるのもあり。地の文ですべて説明しようとすると、説明くさくなります。
ちなみに、上記の設定を使って短編を書くとしたら……。
レランとロラン、外見描写してませんよね? あえてこのまま詳しく書かずに、中盤以降までストーリーを進めて、ラストに彼らの姿を描く。じつは消えた神族というのが科学の発達したホモ・サピエンスであり、残された彼らはフカフカのウサギ型ロボットでした、とかね。
長編にするなら、そこまでを一話めとして、あとは神族を探す冒険ですね。
さて、三大描写以外の描写、ほかにはあるかな? ないかな? なさげな? いや、まだある! 僕の大好きなやつだ! そう。それは、謎解き!
謎解きですw
ミステリーにおいて必須の描写。これって、風景でも、行動でも、心理でもなく、ましてや設定などではない。
謎解きは謎解きとしか言いようがないですね。論理描写とでもいうもの?
これがうまく行けば行くほど、上質なミステリーになる。
ちなみに、謎解きを成功させるためには、『ミステリーのコツ』で書いたように、伏線を緻密に構築して、うまく回収すること。それだけです。
ただ、多少のやりかたの違いはあって、小さい謎をその都度、解決していく方法と、最後にドカッとまとめて解く方法。あるいは探偵役ではなく、犯人が告白するタイプとか。
謎解きはミステリーの華。
なので、これが説明くさい、長すぎると文句を言う人はいません。むしろ、そこを楽しむために、ずっと伏線部分を読んできてるわけなので、丁寧であればあるほど喜ばれます。
謎解きはミステリーにだけあるわけではないですね。
謎をはらんだストーリーでさえあれば、どんなジャンルでも存在し得る。
三大描写以外の描写。
ほかに何かあるでしょうか?
レシピとか、クイズとか、音符とか、暗号とか、何にあたるんでしょうね? 小説のなかでも使うことはある。
まあ、このように描写にも種類がある。
自分の尊敬してる作家さんの作品とか、大ヒット作とか、文豪の傑作とか、分析してみると面白そうですね。
冒頭が何描写から始まってるのか。それぞれの描写の全体のパーセンテージはどうなのか。連続して描かれる一種類の描写が、どのていどのブロックで続くのか。ひんぱんに切りかわるのか。意外と長いのか。ラストの一行は何描写なのか。などなど。
小説の奥義が見えてきそうな気がしませんか?
ほんとはこのエピソード、明日に更新しようと思ってたんですが、今日でゴールデンウィーク終わりなので、明日からは仕事の人が多いだろうな。ってことで、今日のうちに公開してしまうことにしました。
今回は、ここまでです。今度こそ、ほんとにw
また何か思いつけば更新しようと思います。
では、いつの日か、また〜
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