第4話
「……外人?」
うーん、と考え込んで立ちすくんでいたら、突然横から声を掛けられ驚いて跳びあがった。
「うわああ!……、って、あ、さっきの男の子だ」
「……あ、日本語喋った」
……ん?
「金髪だし、目緑色だし、お前外人の子どもだよな?うちの庭で何してんだよ?」
金髪?緑の目?……っていうか、もしかして……。
「え、えええ?!君、僕が見えるの?」
「は?何言ってんの?お前、やっぱり泥棒かよ?!警察呼ぶぞ!」
男の子の雰囲気がどんどん剣呑になっていくので僕は慌てた。
「ケイサツ?何だか分かんないけど、やっぱ僕が見えてるんだ!うわー、すごい。天使が見える人間て、本当にいるんだー」
僕は物珍し気にその男の子に近寄り、前から横から後ろからその子を観察した。もしかしたらこの子も天使なのかと思ったけど、やはり人間みたいだ。
周りをくるくる回る僕を不審に思ったのか、男の子は手で払ってまた叫んだ。
「お前、泥棒じゃないなら出て行けよ!なんだんだよ?!」
今一度正面から男の子を見ると、やはりとても強い悲しみが光を放っていた。
見過ごせない。どうしても。
「驚かせてごめん。僕は泥棒でもケイサツ、でもないよ。天使。クリスマスだから地上に降りてきたんだ」
無断で、だけどね。
しかし、ちゃんと自己紹介したのに、男の子の怪訝な顔はどんどん険しくなり続ける。
「天使……?お前、バカなのか?そんなもん、いるわけないだろ?!」
「え?いるよ。だって僕がそうだもん」
「嘘だ!そんな、天使がいるんだったら……、神様だっているはずじゃないか!」
「うん、いるよ。あ、さすがに神様は地上には降りてこれないけどね」
力が強すぎるから、ものすごく上から照らすしか出来ないんだ、って、前に母様が言ってた。
「嘘だ、嘘だ嘘だ!だって、神様がいるんだったら……、どうして俺のお願い聞いてくれないんだよ……」
僕はびっくりした。さっきまであれほど強気だったのに、どんどん声に力が無くなっていく。しかし悲しみの光は反対に強くなる一方だった。
そうか。この子の悲しみって、神様も介入出来ないものだったんだ。
「君、とても悲しいんだね」
思わずそうつぶやくと、男の子は驚いたように顔を上げた。
「理由は分からないけど。君の悲しみがどんどん強くなっていく。僕、こんな強い悲しみ、初めて見たよ」
光を見つめ続けていると、男の子の気持ちが伝播したのだろうか、僕の目からぽろっと涙が零れてしまった。やばい!
慌てて目をこすったが、間に合わなかった。バサッと大きな音を立てて、僕の背に翼が広がった。
「……お前……。本当に、天使、なのか……?」
男の子の目が驚きで大きく見開かれる。
不幸中の幸い、これで天使だと信じてくれたらしい。僕は学院では落ちこぼれだけど、母様譲りで羽根だけは大きくて真っ白なんだよね。その分制御が難しくて、泣くと出ちゃう。困ったもんだ。
「あはは……、信じてくれたなら良かった」
気まずい。それじゃ、と出て行こうとしたところで、逆に男の子から手を掴まれた。
「待って!あの……、本物なら、相談したいことがあるんだ」
振り向いて驚いた。男の子の悲しみの光が、さっきよりずっと小さくなっていたからだ。思わず僕は、頷いてしまっていた。
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