6章
6章 不信
2033年7月
俺が信じていたものは何だ
元々身寄りのない孤児だった俺は何故か磐勢のジィさんに拾われた
別に住み着いていた訳ではなく中学に上がった時一人暮らしを始めた
それからもジィさんに武術を指南してもらいながら暮らしてたが俺には何にも無かった
ジィさんには恩があるし生活に不満があった訳でもない
ただどうしても人を信用できなかった
いやジィさんは別だぜ?
ただなんか誰かの腹の底にはやっぱ見えねぇ黒いもんがあるって思うとな
それで人付き合いはずっと苦手分野だった
まぁそれでも何なく、気にする事無く生きてたんだが、、
突然!
なんと突然!
気を失っていたら20年も時が経っちまった!
名探偵コバンもびっくりだぜ!
体が縮みもしねーしおっきくもなってねぇ!
挙句街中で出会った奴らはテロを起こすとか抜かしやがる!
それ以外の奴もキャラの濃い奴ばっか!
これはクソ面白い展開だなぁ、、と
思いつつもやっぱ人付き合いは苦手なんだよな
昨日いた赤羽?って奴にも手合わせして貰ったが距離感を探ろうとする自分がいやがる
もちろん今の状況はわかってる
だが俺も変わりたいってのもある
少し、、話してみよっかな、、
まずは難波って奴のとこに座る
「な、なぁいきなりで悪いんだが
あんたは何でテロに加わったんだ?」
「私ですか?そうですね、諒君は特殊な状況ですので何とも言えませんが少なくとも私と他の方々は今のこの国ではいけない、と思っているからだと思います
私は周りの望む姿が自分の誇りだと思っていました
ですがそれは間違いでした
本当の意味での誇りはこの国では持つ事は出来ないと思います」
「なるほどな、、」
腕を組み首を曲げる
「諒君は今の日本をどう思われますか?
見た感じで結構です」
「そりゃあ俺も今のままじゃダメだと思うぜ?聞いただけでもおかしい話ばっかだ
だがきっとこうなったのも理由があるだろうしもちろん他のみんなも思う所はあるだろうし、、うーーん、わっからんな!!」
、、と、話していると後ろから観斗と聡が話に入ってきた
「諒さんはその気持ちのままで良いと思う
この計画が終わるまでずっとその気持ちで考えていてほしい
数少ない昔の事を知っている人だから」
観斗が視線を向ける
聡も俺を見ている
「僕もそう思います
もしこの計画が成功した後今の状態よりも酷い国になるのは絶対に避けなければいけないです
だがらこそ今の国を客観的に見れる諒さんが正しい事を思考してもらえるのは僕達にとっても嬉しい事です」
「だ、そうですよ諒君?実は私達との距離感を気にしていましたね?自分の役割が無いかも知れないと憂いながら」
「ぎくっ!?!?」
「いや声に出てる!(笑」
「う、うるせー!俺はあくまでどう考えてりゃいいかなーって思ってただけだよ!」
3人に笑われる
笑われてんのにこっちまで笑っちまうのは何でだろうな
「諒は昔から人と関わるのが苦手でな
最初木戸君達を連れて来た時はどうなるかと思ったが、存外あいつも変わろうとしていたらしい
餓鬼が変われるのに大人も国も変われませんとは言えんなぁ」
「同感です
にしてもみんな、こんな状況でも楽しそうですなぁ」
「あぁ、諒の笑顔なんざ初めて見たかもしれん、普段の阿呆面に磨きがかかっとる」
「ジジィとオッサン聞こえてんぞ!
殺してやる!!」
すると頭が割れたかの様な雷撃を受けた
後ろを向くと観斗のお母さんが悪魔の様な顔で立っていた
「もう一回物騒な事言ってみな?
両足で歩けた日々を懐かしくしてやろうか?」
「ご、、ごめんなさい、、」
「ぁ?てめぇは虫か?そんなんでテロすんのか?あん?シャッキリせんかぁボケ!!」
「ずいまぜんでじだ!!!」
半泣きで腹から声を出す
「よろしい」
悪魔の許しを得て安堵する
難波がとんでもない顔をしてビビってる
すると観斗が悪魔の元へ寄った
「母さん何してんのぉー!?」
「あれ、私何かしたかしら、、目がよく見えないわ」
「コンタクト修理から返ってきたの知ってるからね」
「てへっ」
あの悪魔、、母親の真似も出来るのか、、
と、変な和み方をしていると聡の電話が鳴った
すると随分と慌てた様子だった
「はい!分かりました、ありがとうございます、、ごめんなさい、、」
「僕の職場からでした、、どうやら全部バレてるみたいで
ひとまず僕の上司が本庁に出向いて上手く誤魔化してくれているみたいなので大丈夫そうです」
「本庁、ですか、、あそこにはごく一部の上層部の人間しか入れなかった筈ですが、、」
「そうなんですか?」
「まぁ、今回は異常事態ですのでイレギュラー扱いの可能性は有りますが、、」
「ところでジィさん、これからどーすんだ?
赤羽が戻って来るのずっと待ってんのか?」
「いや、赤羽君が帰ってくるのはあと2日は後だろう
ワシらは明日動く」
「どっかアテがあんのか?」
「静岡にあるラビッシュの労働施設へ向かいそこを襲撃する」
「わぉ、いきなりぶっ飛ぶねぇ、アレの出番か?」
「使いたくて仕方無いんだろう?」
「まぁな、」
難波が慌てる
「磐勢さん、いきなり襲撃ですか!?」
「あくまで威嚇だ、殺生もせんし襲ってくる奴しか叩かん
他の皆もそれで構わんか?
涼子さんは屋敷に居て下さい
弟子を置いておきます」
「分かりました、、観斗は大丈夫でしょうか?」
「聞くまでも無さそうな態度をしてますよ?
安全は保証します」
不安そうながらに涼子さんが頷く
「んじゃまぁ、とりあえず飯食って寝るか!」
次の朝、9時ごろには全員で朝飯を食ってから出発の準備をしていた
ジィさんが声を張る
「今日が初めて行動を起こす事になる
目は付けられているが明確に敵対行動に出るのは初だがら不意打ちには持ってこいだろう
今日の動きだが俺と諒で先陣を切り後の人間はラビッシュを逃す事に専念してくれ
安心しろ、奴らは逃げたラビッシュは不用意に追わんらしい
いずれ死ぬ者と見ているらしいからな
逃したラビッシュは別で動いているワシの弟子が別荘にて保護する
絶対に無断で動くなよ?」
「おし!んじゃ行きますか!」
全員で車に乗り込み出発する
出る際に観斗のお母さん(悪魔)が手を振っていた
震えが止まらなかった
2時間ちょいで予定の場所へ着いた
「ジィさん、正面からこんにちわか?」
「勿論だ、それと諒これを」
「お?待ってました!こいつがねぇーとな?」
「諒君、それは刀ですかな?」
「あぁ、ジィさんがくれたとびきりすげー奴だ、あ、ジィさんアレも忘れてるぜ」
「忘れておらん、ホレ」
「諒君、今度は飲み物、ですかな?」
「酒だ」
「へ?」
「酔拳って知ってるか?アレの刀バージョンみてーなもんだ」
「ワシらの流派は五体不満足での修行をしていてな、わざと淀ました神経だからこそ成せる技を磨いておる」
「おいジィさん、誰も信じてねぇーぜ」
「当然だ、さぁて行くぞ!」
2人で酒を一気飲みしてから呼吸を整える
丁度見張りが段々と現れてきた
「祭りだ」
一息で全員を斬り伏せる
観斗達が慌ててる
「人が!血が!大丈夫なの2人とも!」
「殺しは死ねぇーよ」
「おい!さっさと行くぞ!」
換気の悪い工場内を進む
警備は少ししか居ないらしい
「ジィさん、これほぼ制圧じゃねぇーか?
後はラビッシュしか居ないみてーだ」
「あぁ、だが油断するな」
全員でラビッシュが収容されている場所を解放していく
さっきの静けさが一瞬で大騒ぎだ
「よし、最後は1番奥だな、開けるぜ」
全員で中に入るとそこには若い女の子を盾に立つ女の格好をした男?みたいな奴が立っていた
「てめぇ何者だ?」
「待ってたよー!テロリストのみなさーん
あたしねー君達の事何でも知ってるんだー
ここをやった後はお仲間と合流してから一番大きいラビッシュ施設、東京の品川に行くんでしょー?」
ジィさんが答える
「だから何だ、その前にその子を放しなさい」
「ぇぇえ〜?どーしよっかなー?そしたらー
取引しようよ?」
「取引?」
「この子を連れながら行動してくれない?
そしたらこの場は手を引くよ?」
「意味がわかんねー、何が目的だ?」
「今はわかんなくていーの、で?どーするの?この子殺しちゃうってのもアリだけど?」
「それは絶対に駄目だ」
観斗が前に出る
「分かった、その子は連れてく、でもってお前を逃しもしない」
「ヘぇ〜?おもしろーい?とりまこの子渡すねー」
「ジィさん!その子と観斗達連れて部屋から出ろ!」
「ねぇねぇ?ほんとにあたしとヤるの?
多分君じゃあ勝てないよ?」
「俺の技見てから言いやがれ」
「諒、油断は無しだぞ」
「あいよ」
「磐勢さん、実は私、彼の事を知っています」
「あの女装君か?」
「はい、彼は言由の古い友人でして
しかも言由と同じかそれ以上に強いんですが、、、」
「なるほど、、まぁ今回は諒の勝ちだ」
「で、ですがこの間言由に!」
「あの時は素手だからな、今回は違う
恐らくあの女装君は手練れである上に色んな小細工をしとる様だが、まぁ心配はいらん」
「そんじゃ行くぜ」
再び息を整える
久しぶりの本気だ
刀を鞘に仕舞う
足を限界まで開く
「磐勢清刀流 絶刀」
風を縫い自らを刀身とし対象に刹那の刃を勢いが落ちるまで与える
習得に9年かかったクソ技だ
手応えはあった、だがまだ立ってるか
「なるほどな、すげーなお前」
「んふー♪すごいじゃーん、あたしびっくりしちゃった!でも切り傷2個しか無いよ?」
「そうかい、でも折角の見えないバリアみてーなのはお釈迦らしいがな」
やっと気付いたのか表情が変わった
「まぁいいわ、そろそろ時間だし、多分みんなにはまた会うから、じゃぁねー?
あ、ちょっと離れて離れて!」
そう言われて離れると手からビームでも出したのかなんかぶつぶつ言いながら壁を壊してどっかに行っちまった
「よくわかんねー事だらけだけどとりま帰るか!」
すぐに飛騨に戻った
着くと早速全員で飯を喰いながらまず助けた女の子から話を聞く事にした
俺は勿論人見知りなんて訳じゃないがそういうのは他に任せた
難波が女の子に話しかけた
「バタバタで申し訳ありません、食事しながらで結構ですのでまずお名前を伺っても?」
「悠季、、久遠、です、、」
随分と暗いな、まぁラビッシュになっちまったらそうもなるか
「久遠さん、良い名前ですね
それでいつからラビッシュに?」
「一週間と少しくらい、前です、、」
「僕と木戸が知り合ったくらいだ
もしかしたらこの子を僕たちと合流させたのには訳があるかも」
「私も思いました
久遠さん、先程の男性から何か聞いている事はありませんか?」
「一言だけ、、彼らと居れば両親に会えるって、、」
「そのご両親は?」
「私より2年も前にラビッシュに、、なりました、、」
涙を飲んでいる様に見えた
そんな気持ちで2年もいたのか
考えられない
「うっしゃ!テメーの両親は俺らが助け出す!だからお前も俺らに協力する!いいな!
分かったらさっさと飯食え!
それと!分かってると思うがもし両親が亡くなってても文句は無しだ!今の総理大臣をボコボコにしろ!いいな!」
希望論は持たせたくなかった
他にも言い方があったはずだろうが俺にはこれしかなかった
すると初めて久遠が笑った
「えへっ、、諒さんって馬鹿なんだ!」
「磐勢清刀流、、、」
「やめろバカ諒!」
「ジジィ、今は止まる時じゃねぇ、この馬鹿にどっちが馬鹿か教えてやる」
「おい」
悪魔の声が聞こえて体が止まる
なんかの能力か呪いか?
「座れ」
「はい」
「飯が冷める、食え」
「いただきます」
「うまいか?」
「美味しゅうございます」
「よろしい」
またしても命長らえた
「あの人は?」
「僕のお母さんだよ」
「観斗君のお母さん怖いんだね!」
悪魔が化けの皮を被る
「あら久遠ちゃん!よく見たら可愛いのね!
後でお風呂を借りなさい!きっともっと可愛いわ!」
「うん、僕もたまに怖いよ」
「あら観斗どうしたの?」
「なんでもない!!」
「いやこえーだろ」
箸一膳がセットで俺の足元に突き刺さる
「観斗のかあーちゃん美人だな!」
「あらやだ♪」
さっきの女装の奴と同じくらい気味が悪かった
「にしてもあの女装野郎、一体なんなんだろーな」
「言由君が戻って来てから考えよう
ひとまず明日は皆ゆっくり休んでくれ
あまり外には出ないで欲しいがな
夜には言由君が帰って来るだろう」
「よしっ!そんじゃ夜通しカードゲームでもやって盛り上がろうぜ!」
「ガキかよ」
「ガキだね」
「ガキだなぁ」
「ガキですか?」
「ガキか?」
「ガキ」
「ガキじゃん」
「おいまてぇーー!1番と7番は現役のガキだろぉぉー!あと6番さん、怖いです、、」
「なんか僕の職場にも諒さんみたいな人がいてちょっと変な親近感が湧きます」
聡が笑いながら言う
「でもその人もどこかまだ感情が薄い気がするんですよね、、」
「じゃあ全部終わったらそいつともカードゲームだな!」
俺は何か勘違いしていたらしい
信じていたものがあったんじゃない
信じたいものがあったんじゃない
誰かを信じるという行為を知らなかった
まったく
全員信じるに値する馬鹿ばっかだな!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます