3章 

3章 停滞


2033年7月



私は何を目指していた


自分の正しさと自分の大切な人を守る為

警察官になり正しい幸せの為突き進んで来た


つもりであり筈だった


警官になって3年程経った時HCP法という法律が施行され全国民が受ける事になった

それは公務員も例外ではなく

私は好成績で試験に受かったがその時籍を入れていた妻は試験に落ちてしまった

その際私達の入籍は無効とされ妻はラビッシュと呼ばれる人の扱いを受けない身分となり私の元から消え去った

それから2年程経った時職場の同僚から妻は娼婦となった後、亡くなったと聞かされた

それ以来私には何も無かった

ただ同じ毎日を、意味も無くそして意味が生まれない日々をすり潰していた

若い時はただ目の前の大きな目標を必死に追い求めそして妻と共に死ぬまでそうあり続けると信じて止まなかった

勿論憎しみはある

だがそれよりもこの悪に満ちた仕掛けで妻が命を落としたのならこの仕掛けを壊してやりたいという思いがあった

私の考えが正義だとは言わない

ただそのくらいしなければ妻の死は何も意味を成さなくなってしまうと思う

今度こそ私は大切なこの妻への想いを守る為歩みを止めないと心に誓った

もう2度と意味を失わぬ様に


そう心の中で思いながら赤羽という男の家に着いた

赤羽はHCPが施行されたこの国では珍しい

所謂悪ガキだった

あり得ない程やんちゃで悪い事をしたがって

でもそれは今の日本人には一切無い感情であり人格だった

だから私は彼の面倒を見続け支えて来た

彼も大人になるに連れて私の行動の意味を理解したらしく今ではよく会う飲み仲間となっていた

彼は珍しくアパートに住んでいる

旧い時代を無くしたくないと立ち退きを何度も断っているらしい

彼の部屋のインターホンを押す

「はぁーい」

生気の無い声が聞こえて安心する

「仲吉だ、話がある」

「あーおっさんか、鍵空いてるぞー」

相変わらず不用心だなと思いながら部屋に入る

「相変わらず部屋の汚さが異次元だな

カップ麺のゴミだけでビルが出来そうだ」

「そんなねぇーだろ、まぁイス代わりになるくらいの量ではあるな」

何故かこいつと話すと安心する

やはりどの世界にも必要なのだ

バカは、、

「で、話ってなんだ?俺も寝起きだからタバコ吸いながらで良いか?頭が回らん」

「いつも回ってないだろう、構わんから聞いてくれ

私が昔、お前にこの国を変えたいと話した事、覚えているか?」

「んぁ?そういえば言ってたな

まぁあんたの事情からしたらこの国の人口を100人にしても咎められんくらいの話だからな」

「大袈裟だな、、まぁともかく私は今でもそう思っていた

そしたらな、昨日2人の男が私の元を訪ねてきた、

1人は地域基準監督係の男、もう1人は高校生だ」

「どうゆう繋がりだ?

いやまて、、


OKだ、それ以上はいい」

こいつはバカな筈なんだがなかなかどうして

私の10倍は頭が回る

いつも説明の2割程で理解してしまう

「今その2人はどうしてる?一緒じゃなきゃあぶねーだろ?」

「もう1人、業平という男がいてな

その彼が知り合いの人間が居るからとその方の所へ連れていった」

「大丈夫なのか?」

「それが彼、めちゃくちゃ強くてな

ありゃあ生身の人間が相手なら何の心配もなさそうだ」

「いや、その大丈夫なのか?もあるが別の意味もある、そいつは信用出来るのか?」

「彼は20年間病院で眠っていたらしい」

「なるほどな、それですんなり協力した訳か

そりゃ大層今の国にビビってただろう?」

「自分が住んでた時よりイカれてるって笑っていたよ」

2人してクスッと笑う

「なぁ、言由、、無理な頼みなのは理解している

だがな、、もう限界だと思うんだ

この国は、、、

今は復讐よりもこれからを生きる人間の為にも、終止符を打たなきゃならんと私は思う

お前みたいな奴が消えるのはもう見たくないんだ」

「嬉しい事言ってくれるねぇ、、

なぁおっさん?俺が断るとでも思ったか?」

へ?と驚いてしまう

「前にその話を聞いてからな、ずっと考えてた

どうすりゃぶち壊せるかなーってな

ある程度のプランはある

後は他の連中と合流してから考える

さっき言ってた業平って奴がどこに向かったか分かるか?」

「あぁ、分かるが」

「じゃあ今から出発だ

一刻も猶予はねぇーぞ、こりゃ次瞼を閉じんのは3回くらい日が落ちた頃かな!」

「こ、言由、、その、ありがとう、、」

「俺は生きてきた中で1番信用してんのはおっさんだけだ、おっさんもそうだろ?

俺たちがこうして知り合ってんのはこうゆう時の為だったかもしんねー

やられっぱなしはうぜーだろ?

奪われたもんはきっちり返却してもらわねーとな!」

胸を撫で下ろす

なんとかこれで前に進める

後は業平君の知人と合流して話を詰めれば

、、と思っていたらドアの外からインターホンが鳴った

「ん?誰だこんな時間に?昼間に客人なんて

俺はそんな真面目に人付き合いしてねーぞ?」

「とりあえず出てみなさい」

あぁ、と言いながら言由がドアを開けるとそこには見覚えのある女性が2人立っていた

「やぁ!君が仲吉進きゅんだね!

もう!探したんだからー!キュピーン!☆」

「そうだぞー!キュピーン!☆」

「おいおっさん、、この完全にトランスしてる若作りおばけは誰だ?!」

「おいクソガキ今何つった?玉出せゴラ

テメーのクソ玉2発でパチンコ作ってやるよ

キュピン!☆」

「安心しろ、うちら人は殺さねーから

その代わり魂じゃなくて玉もらうけどな?

キュピン!☆」

「仲吉おじさん、、ボクナキソウ、、

このおばさんたちコワイヨォ」

「は、羽島警視総監殿と、副総監殿、、

なぜこの様な所に、、、」

「おい待ておっさん、今何つった?この2人が?日本もいよいよだな」

「おいテメー、しっかり玉袋洗っとけよ?

そしたら綺麗に貰ってやるから

キュピン!☆」

「そんな事より!仲吉君!優しくて可愛いおねーさん達から君に助言をしに来たゾ!

キュピン!☆」

「助言、、ですと?」

「勿論うちらはあんたらの話ぜーんぶ知ってる

今すぐあんたらの玉でゴルフツアー開く事だって出来る

でもね?うちらは思うんよ

もしこの完璧な状態の日本が内側からボロボロになったら!?そんなの面白くてブラックニッカ浴びちゃうじゃん!?

だからね?君達の話はまだ警察内部では広がってない

動いてるのは政府だけ

それもまだ本気じゃない

ただそれもあと一週間もすれば終わり

うちらにも声掛けて本気で潰しに来る

だからね?協力してあげようと思って?

キュピン!☆」

「ちょっと待ってください?!

何故ですか?警視総監ともあろう方が?!」

「いやだから説明したじゃん!

それに完全に味方するなんて言ってないし

うちらはねー?面白けりゃなんでもいいの?

しけた展開になったらあんたら全員タマキンハントの刑だから

それとこれ持っといて

キュピン!☆」

「これは?無線機?ですか?」

「おいおっさん、これ無線機ではあるがGPSにもなってるし盗聴も出来る

やっぱりこいつら信用でき、、、、、、


ん?、、、

そうゆう事か



何だそれ!面白すぎんだろ!!


おいオバハン共、お前ら天才だな!

腹いてーぜちくしょう!

ったく、てことは俺らが相当重要な駒か、、

なら道筋は最初から決まってるつー事か

ところでおっさんにはどうするつもりだ?」

「考えたのはうちらじゃ無いけどねー

ちゃんとなる様になるさ

うちらは人を見る目が世界一あるからね!

キュピン!☆」

「にしても君凄いね!特別に玉取る時麻酔打ってあげる!キュピン☆!」

「あ、玉取るの変わらないのね、、」

「あ、あの!全くついて行けないのですが?」

「おっさん、安心しろ

こりゃどうやらバカがたまたま集まってテロ企ててる訳じゃ無さそうだ」

「なんだって?」

「まぁ、あんたは今何も考えなくて良い

おいオバハン、ピースが足りない

ヒント寄越せるか?」

「クソガキガ)ん?あるよー!☆

とりあえずねー勝手に来るのが1つ

後ねー、スペシャルが1つとー

それとそっちの1人がキュピン!☆しちゃう!

後はなった時のお楽しみー!

じゃねー!キュピン!☆」

「キュピン!☆」


「な、何だったんだ?、、あの2人は味方なのか?」

「あぁ、ひとまずな、、

とりま業平の所へ向かおう」


そうして私達は業平君が居る場所へ向かった

警視総監達は信用こそ出来ないが暫くは私達の事を見逃してくれるらしい

ならばもう進むしかない

ここが正念場だと感じた


私はもう止まれないのだ

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