第三夜 必中確実

目が覚める。

何か嫌な夢を見た気がする。

「あまね!!!右に避けろ!!!」

警告と緊急性を表す声音を聞き、無理やり体を転がす。

「なんだこれ」

自分の鼻先から血が出ている。

怖いという恐怖。

なんだ?という驚き。

すべてが脳への原動力になった。


冷静になれ!

状況を並べろ!


「ハマチ!何だこいつ!」

「知らん!起きたらいたんじゃ!」

明らかに人間じゃない。

いや、大まかに形はヒト型だけど顔が真っ黒で、右手が斬馬刀のような武器に変化している。

そして百寸近い巨体。         ※約三メートル

庭から逃げだす俺。

「誰も気づかなかったのか?」

「こいつ、あちがみえているんじゃ」


じゃあ、あの生き物たちは・・・


「殺された・・・のじゃろう」

「噓だろ・・・?」


今まで全てにおいて異例すぎる。

「あと少しで道場だ、みんなに伝えないと・・・

ふと、嫌な臭いがする。良くない寒気がする。

「おい、ハマチ。これ」

「血・・・じゃ」


門を開く。

「あ・・・・ああああああああああああ


全てが壊れていく。


何もかも奪われていく。


そんな時に見える色は。


だいたい赤色だった。


「なんで・・・なんで・・・」


爺ちゃんと師範代の・・・死体。


誰がやったかは明白だった。


「ごめん・・・普くん」

「師範代!生きて」

「もうじき死ぬさ・・・だから・・・逃げてくれ・・・」

「嫌です!じいちゃんと師範代も!」

だが、それは無理だ。と。

「天道くんは・・・生きている・・・戦う前に逃がした・・・」

「!」

「きみも・・・共に生きてくれ・・・」

頼むよ・・・と。

覚悟の目だった。

それを受け取らなきゃいけないのか?

「死」という覚悟を。

最後に、右手に気をつけろ。と。

彼女は言った。


門を出ると、森側の道に天道が居た。

「普くん!」

天道・・・君は強いな。

最善を取り続けられる。

俺だって!

森へはしる。

林へ、山へ。

ふと、地面が濡れる。

雨じゃない。

涙だった。

天道は泣いていた。

そうだ、強いわけじゃない。

彼はそうするしかないと分かっていたんだ。


だが無慈悲にも。

その涙は届かない。

ドン。と。

俺たちの前に着地したその姿は。


まるで悪魔だった。


「グギュ…グアア」

「ど、どうすれば・・・」

「・・・先回りしたって事は、俺らより足が速いんだろう。逃げても無駄だと思う」

「戦うって・・・事?」

「怖いけどやるしかないんだ!」

さっきの決断のように。

「天道、君は一番弟子なんだ。自信を持て!」

「・・・で、でも・・・」


悪魔は、大きく右腕を振りかぶる。

「天龍流 鎌鼬!!!」

ガギっ

右腕を弾く。

はずが。




「吹き飛ばされた・・・!」

駄目だ、すぐに、は立て、ない。

「力比べ、じゃ、勝てないか・・・」

悪魔は、反動を利用して左に振りかぶる。


僕は昔から弱虫だった。

普君はすごい。

僕はどうだ・・・?

目の前の巨大な壁に。

あしが震えて動けない。

「天道!避けろ!」


でも、君の踏み出した一歩が、俺に少しだけ勇気をくれた!


飛。


悪魔の振りかざした刀を使い、加速。


木刀を首へ目掛けて。


「天龍流 咲カセ蕾」


が、悪魔は左手を犠牲に防御。


すごい!やっぱり強いじゃないか!

「あと少し!動いてくれ!体!」

俺だって!!


血だらけの体を無理やり動かす。

天道のように戦うんだ!

力勝負じゃなく!

技術で!


「天道、いくぞ!」

「うん!」


まず俺が背後を取る。

振り回す斬馬刀を。


去なす。


避ける。


まともに食らったら駄目だ。


そして!


「天龍流 風柳!」


左手を弾く!

「こっちなら力比べできるな」

同時に!

「頼む天道!」

天道は、悪魔の右手を踏み台に。


「天龍流 咲カセ蕾」


左手、右手を封じた一撃。


まさに必中。さっきわざわざ首を守ったのは、そこが弱点だからだろう。






貫けええええええええええ!



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