マンドラゴラの白湯
私は倒れて病院に運ばれたらしい。マンドラゴラ料理レポートの提出が遅れて心配した編集者が救急車を呼んでくれたとの事だった。
マンドラゴラには毒がある。窒素系の毒物であり、名をマンゴロイドと呼ばれている。
窒素とマンドラゴラ酸はまれに結合する。これがマンゴロイドと呼ばれる毒だ。気化しやすく、マンドラゴラにたまった毒がその口から放出される。この時、叫び声にも似た音を出すのだ。余談だが、この毒を吸わなくともマンドラゴラの叫び声を聞いただけで死亡するとの報告も上がっている。この声が脳と共振し破壊するというのが定説だ。
そして、根にも毒がある。気化しきれなかった毒はその身にも溜まる。叫ばせればほぼ害は無い量である、という話だったが、どうやらマンドラゴラをまともに食べる事は出来ない、という過信があったのが実情らしい。
私はこりもせずに何度も何度もマンドラゴラを食した。それが遂に限界を迎えたのが先日の事だった、という話を医者から聞いた。
療養中に出される病院食がやけに旨く感じる。マンドラゴラばかり食べていた後遺症だろう。
最後に出された白湯を口に運んだ。あの懐かしい味がする。どぶ水を飲まされたかのような不快感が清々しくもあった。
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