マンドラゴラの青椒肉絲

 マンドラゴラの歯ごたえ自体は悪くない。これを生かした料理は無いものか、と考えた結果、青椒肉絲を作る事にした。

 きつね堂のホームページを見ているとマンドラゴラの水煮を発見した。これは使わない手はないと思い立ちすぐさま注文。それが今日届いたのだ。

 まずは下準備。ピーマン、豚肉、そしてマンドラゴラを均一に細切りにする。それから豚肉の味付けだ。酒を小さじ一杯。醤油小さじ一杯。それにといだ卵をかけてよく混ぜる。豚肉に卵を吸わせるのだ。豚肉が卵を十分吸ったのを確認したら片栗粉をまぶして、また混ぜる。これで豚肉の味付けは完了だ。この下味付けの事を中華料理ではチャンという。

 次に、合わせ調味料を作る。まずお砂糖を小さじ1。お酒が小さじ2。お醤油が小さじ2。みりん小さじ2。オイスターソース、小さじ2。お水、小さじ6。そのままだと味が濃いので、水で伸ばして最後に胡椒を振りかける。

 最初にピーマンを焼く。マンドラゴラの熱処理は災害を生むので余熱で仕上げる事にした。軽く火を通したら取り出して置いておく。次は、下処理をした肉を焼く。

 肉は火をかける前にフライパンにのせてよくほぐす。これをしないと卵と片栗粉が玉を作り、最悪オムレツになってしまう。まあ、それもまた旨いのだが。肉がほぐれたら中火で焼く。肉に火が通ったらピーマンを投入。次にチューブの生姜を入れて風味を加える。そして、合わせ調味料を入れて火を止めた。

 マンドラゴラの投入の時間がこの青椒肉絲の鍵だ。熱すぎても駄目。冷めてしまっても駄目だ。油の音が収まるまで待った。

 マンドラゴラの細切りを投入しよくかき混ぜて直ぐに皿に盛った。臭いは悪くない。マンドラゴラの青椒肉絲の完成だ。


 青椒肉絲を箸でつかみ口へと運ぶ。味は期待していない。2、3度噛んで直ぐに飲み込む。しゃきしゃきとした歯ごたえが食欲をそそる。しかし、噛みすぎるとあのマンドラゴラの味が口の中に広がってしまう。噛んでは飲み込み水で流す。はたして、これは料理を楽しんでいると言えるのだろうか。だが、これがマンドラゴラを食べる最善の方法であると確信している。


 一皿食べ終えると景色が暗転した。私は気を失い倒れこんでしまった。

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