マンドラゴラのステーキ

 マンドラゴラの日干しを買った。マンドラゴラ農家が直接販売しているのをインターネットで見つけてすぐさま購入した。

 マンドラゴラの日干し。もしやマンドラゴラ農家はあのマンドラゴラを食べているのか、と興味がわいた。


 マンドラゴラの日干しが家に着き箱を開けた。その見た目はなかなかえぐいものがあった。

 マンドラゴラはご存知の通り人の形をした植物である。それが日干しにされているのだ。まるでミイラのようなマンドラゴラは食欲を減退させるには十分な見た目である。


 さて、どのように調理しようかとマンドラゴラ料理大全を開いた。マンドラゴラの日干しを使った料理はいくつか見つかった。だしをとる鍋料理、軽く炙って食すステーキ、水につけて戻す方法などが記載されている。

 私はマンドラゴラのステーキを選ぶ事にした。どうも他の料理はマンドラゴラビギナーには厳しく感じたからだ。

 とりあえず、マンドラゴラの日干しを取り出して齧ってみた。それは苦味を越えて痛いと思えるほどの不味さだった。

 ステーキを選んだのには理由がある。何とかソースでマンドラゴラの味を誤魔化せないかと期待しての事だ。

 窓を開け換気扇を全開にする。マンドラゴラを軽くコンロで炙ってみた。予想外にそこまで臭いは発しなかった。1ヶ月は掃除してないトイレ位の臭いではあったのだが。

 ソースはデミグラスソースを選んだ。濃いめに作り素材の味を消す感じに仕上げた。切り分けたマンドラゴラにドロドロのデミグラスソースをかける。見た目はそこまで悪くはない。恐る恐るフォークでさして口へと運ぶ。デミグラスソースの味とマンドラゴラの噛みごたえはなかなかマッチしていた。調子にのって咀嚼すると口の中でマンドラゴラの味が広がり、思わず吐き捨てた。

 用意していた麦茶を飲み込む。マンドラゴラの味は他のもので打ち消せるような甘い品物ではなかったようだ。

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