第6話 発露
「オマエ、そんな目の色してんだな。」
開口一番、そのヒトは愛しむ様に言った。
「えっ...と...ひっ!?」
一瞬頬でも赤らめそうになったが即座に我に帰った。ようやく脳が覚醒してきたので色んな情報が一気に入ってくる。その中には【凄く綺麗なヒトが】【私を双腕の中に収めている】という信じたくない状況も含まれていた訳で。これはダメだ、動じてはいけないやつだ。この場の雰囲気に呑まれたら一生後悔する気がする。
相手は私の人様に見せられない様な表情の変化さえも至近距離で興味深そうに眺めている。どうしよう沈黙が怖い...けど何だろう、この感じ。何か大事なことを忘れているような...。
そういえばアオイさんは?
私を銃で撃って、それで...ダメだ分からない。
「ぜんぶ声に出てるぞ。」「ひぇっ、」
声の主は少し呆れたように双眸を細めると、私と更に距離を詰めた。あ、ヤバい。此れは、いやこのヒト男だ。逃げよう、今すぐ逃げよう。逃げなきゃ逃げなきゃ逃げて今すぐここから
私の脳裏に今迄のブラックボックス収容記憶が一気に解き放たれて行く。今すぐこの腕を振り解きたくなる程の地獄の様な刹那。嫌、いや、イヤイヤ...思い出したくない、怖い、ヤダ、こわい、助けて、助けてダレカ、わたしを
「こ、ない、で...っ」
振り絞る様に声に出すと、涙も同時に溢れてきた。どうしよう、止まらない、とまらな
「サクヤ、泣くなって。今は涙を拭う時間も惜しいんだ、分かってくれ。」
そんな優しい声で私に触れないで、信じられない怖い、温かい、うそ、怖い、こないで、
思わず目を閉じる。もう何も見たくない、感じたくない、彼から与えられる全てを拒絶したいっ!
その瞬間、再び私の意識は暗転した。
『検証完了。カムヒ・カイネスの
真白の神殿
その中央にある天蓋付きの寝台の上
少女は一条の槍を抱いて眠る
その顔は苦悶に満ちたまま
『守ってやるさ、全てから』
天蓋を揺らす風の声も知らぬまま
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます