第34話 氷特攻でボーナスタイム。
「宿れよ氷獄! 吹雪け絶対零度、ココロ・シュートォォオ!」
翌日早朝、和やかなホームセンターの朝はワイバーンの襲撃から始まった。
私は秋菜のアイディアを受けてから考えていた、対ワイバーン用の特効戦術を早速使用して一匹落とした所だった。
「はっはぁ! ほんとに氷なら楽勝だなぁオイ!」
氷エンチャントから凍魔法乗せ必殺スキルのスペシャルコースを乱射でご馳走し、動きが鈍った所を幻想刀で首をざっくり、そしてまた氷射撃乱射と言うハメ殺し。
五分もかからず一匹落とせた。
「格上がなんぼのもんじゃい!」
「おねーちゃん、あきなもそれ真似するね! 宿れよ氷獄、吹雪け絶対零度のドラゴンブレス・ガンズバースト!」
「ああああああ丸パクリはイカンですよ秋菜さん! そっちの必殺、名前も見た目もカッコイイのに連射力高すぎ笑えなァァあい!」
全部で六匹襲って来たワイバーンは、何とか私が三匹、秋菜が二匹、雪子と春樹が一匹仕留めて、秋菜が三匹目を仕留めそうになった所で待ったをかけた。
「えーなんでー!? あきなのレベルあげないためー?」
「いや正直その気持ちがゼロって言ったら嘘になる。先に三匹仕留められてよっしゃぁってなってる。けど違くて、どうせならコイツにペットフード食わせて見ようぜ?」
そんな訳で、残った一匹を冷やしに冷やして活動停止に追い込み、ホームセンターからペットフードを貰って来た私。
このままここで見せると、ペットフードの使用方法がモロバレだけど、必要数はもう確約してある。
そして「持って帰れるありったけ」と約束してるので、このワイバーンを手懐けて空輸が可能になれば、ペットフードを根こそぎ貰えるはずなのだ。
「そっかー、おねーちゃん良く考えてたんだね。……あきなのレベルがどうとか言って、ごめんなさい。あきな恥ずかしい……」
「いや、正直ほんとにちょっと思ってたから謝らなくて良いぞ。体面保てる上にちゃんとした理由付きで秋菜のレベリング止められるひゃっほーいって思ってたもん」
「………その本音は聞きたくなかったなぁ」
そしてワイバーンにペットフードをむしゃむしゃさせる。
冷やしワイバーン戦法を止めて、炎と風で気持ち温めていく。
「コイツが暴れだしたら秋菜が仕留めていいから、それでチャラにしてくんね?」
「わかったー! ……でも大人しいね」
「良かったぜ秋菜のレベリング止まってひゃっほーい!」
「…………………あきな、初めておねーちゃんカッコ悪いって思った」
五キロ袋のペットフードを丸々食わせた結果、温まって動けるようになった状態のワイバーンでも、大人しいままだった。
翼を畳んだ前傾姿勢でぐるるると喉を鳴らして、暴れる様子は一切ない。
手懐けたこのワイバーンはダークグレーで、殺意に塗れていない双眸は何となく愛嬌があった。
よしよし。殺し尽くしたいモンスターを手懐けるなんて正直クソ程ムカつく話だけど、どうせリポップするなら有効活用して、より多くモンスターを殺せるようにした方が良いのだ。そう思うことにしたのだ。
そう思わないと私の心が軋んで砕ける。
「本当ならじっくりと、ペットフードの効果を検証したい所だけど、どうしようね?」
「んー、レベリングにもなるし、しばらくここに居る? 物資はいっぱい有るし、ワイバーン肉と交換してもらっても良いし」
「それも良いな。効果が長く続くようなら、コイツに仲間釣ってきてもらうか」
「わぁ、おねーちゃんえげつなーい!」
朝っぱらからワイバーンと戦い、もう今日の仕事良いよねってところで、ホムセン組のリーダーがやってきた。
「こ、このワイバーンは?」
「あー、本当は教えたくなかったんだけど、昨日言ってたペットフードの使い方ですよ。モンスターを手懐ける効果があるんです」
「………なんとっ」
一応、自分たちが住んでる所でも少し前に判明したばかりで、まだどれだけ安全かも分からない事は伝えておく。
なのに、いつの間にか集まって来て、昨日ぶっ飛ばした奴とは別の嫌な感じの男がなにか喚き出した。
「ふざけるな! そんな物があるな、もっと早く教えろよ! それを使ってソイツらを支配すれば、俺たちはもっと楽に暮らせたじゃねぇーか!」
「うるせぇなぶっ殺すぞ?」
普通にイラついたので抜き身のままの刀をチラつかせた。
「どれだけ安全かまだ分からねって言ってんだろ? あ? いつ暴れ出すかも分からないワイバーンを隣に置いときてぇなら好きにしろよ。このワイバーンもくれてやるからよ、突然こいつが暴れてもお前が何とかしろよ? な? 出来るんだろ? なぁ?」
刀を肩に担いでメンチを切る私はまさしくチンピラだろう。
あ、ゴボウ貰ったんだよね。キンピラ食べたい。
「だ、だったらお前らなんでワイバーン手懐けてんだよ! 言ってる事とやってる事ちげーじゃねぇか!」
「あ? 馬鹿か? 私達は自分でこいつら何とか出来るって言ってんだろ? 馬鹿なのか? クソなのか? こいつが暴れても責任もって殺して処分出来るから実験してんだろって、分かんねーほど頭沸いてんのか? 腐ってんのか?」
しまいには刀の側面でそいつの頬をペチペチしてやった。
ホントに馬鹿は話をしてても“会話”にならないから困る。
「なんか、ここに居るとおねーちゃんどんどんお口悪くなるね。あきな、ちょっとヤだな」
「秋菜はふわふわ女の子っぽい私が良いのか?」
「カッコイイおねーちゃんも好きだけど、ふあふあ可愛いおねーちゃんも大好きだよ?」
「……まぁ春樹が居ないところで、気が向いたらな」
「なんでだよっ!? 俺にも優しくしてくれよ姉ちゃん!」
「いやだってお前、最近わりと真面目に気持ち悪いもん。早く他に獣系精霊持ちの女の子探せよ」
「居ねーんだよ! 居ても姉ちゃんほど可愛いか分かんねぇじゃん!」
「お前ほんといつからそんなに私にぞっこんなの?」
「あの日から!」
「どの日だよ」
「お兄ちゃん気持ち悪い」
話しは終わりと、馬鹿を無視して身内と馬鹿をやる。
とりあえずワイバーンの調教はペットフード一袋でどれだけ維持出来るのか、ペットフード無しでも手懐けられるようになるのか、色々と試す必要がある。
「あ、そうだ。太郎さん呼ばね? 確かペットフードの研究もしてたよな?」
「でも、来れないって話しじゃありませんでした?」
「このワイバーンに乗ってワイバーン肉をお土産に持って行けば、ちょっとくらい貸してくれるんじゃね?」
「…………確かにあそこの連中、結構即物的だからな。目の前に新鮮なお肉出せば太郎のおっちゃん借りれるだろ」
と、言う訳で、話に着いて来れないホムセン組はほっといて、ワイバーン肉を急いで二匹分解体。
そして大人しいワイバーンに私の命令を聞くかどうか確認した後、魔法で凍らせたワイバーン肉をブルーシートで包み、ワイバーンの足に持たせる。
ブルーシートはワイバーン肉を対価にホムセン組から貰った。
「それじゃぁ行ってくるなー」
「気を付けてねぇー」
「太郎のおっちゃん連れて来いよー」
「こちらに泊まれる物資もお願いしまーす!」
「あいよー」
私はお見送りを受けてワイバーンの背中に乗り、二頭分のワイバーン肉を足で持ったワイバーンを羽ばたかせる。
重い荷物を足で持っているにも関わらず、やっぱり問題なく飛べる様だ。
そうだよね。このくらいの図体で、この重さの肉が詰まってる生き物が飛ぶには、このワイバーンの翼じゃ足りないと思ってたんだ。
だから物語で良くある、魔力を使って飛んでるタイプのワイバーンだと思っていたのだ。
ならば荷重分も余計に魔力使えば飛べる話しになる。
今のところ従順で、飛行速度も半端無く申し分無いワイバーンは、ほんの数分で目的地に辿り着いた。
第三中学校である。
下は大騒ぎになっているので、私はワイバーンに命令してその場で待機させる。
「今から私一人で降りるから、合図をしたら降りてこい。それまでここで高度を維持して待機。魔力が足りなくて飛べなくなった場合だけ降りて来ていい。この命令を理解出来たら頷け。分からなかったら首を触れ」
ワイバーンが頷いたので、私はその背中から飛び降りた。
魔法の風と天空侵犯を使いながら学校の校庭に一人降りて、直ぐに駆け付けて来た太郎さん含めた三幹部に詰め寄られる。
「キミィ! あれはなんのだ!」
「ココロ君、流石にモンスターで直接乗り込まれたら擁護出来ないのだよ」
「あー、配慮が無かったことは謝ります。ただ、新鮮なワイバーンのお肉が手に入ったので、凍らせてるとは言え急いで皆さんに届けたくて……、あ、迷惑でしたら持って帰りますんで」
「誰もそんな事言ってないさもちろん大歓迎だよキミィ早くあのお肉を運んでくれただろうモンスター君も休ませてあげておくれ早く早くハリィハリィ!」
手首がドリルかよ。
音速手のひらがし頂きました。私じゃなきゃ見逃しちゃうね!
「ゆっくりおりてこーい!」
合図をすると、本当にゆっくり、雰囲気たっぷりにバッサバッサと降りてくるワイバーン。
ひと狩りしちゃう某ゲームでもメジャーに扱われるモンスターであり、男子中学生も沢山いるこの避難所では結構好意的に見られた様だ。主に「ワイバーンかっけぇー!」と言う感じで。
「ふむ。手懐けたのかね?」
「ええ。向こうがホームセンターで、ペットフードの価値を知らなかったので吹っかけちゃいました」
「それはまた。こちらにも融通してくれるのかね?」
「それは太郎さん次第ですよ。力を借りに来たんですけど、茂さん、太郎さんお借りしちゃダメですか? 向こうで多分もっと、そのお肉が手に入ると思うんですけど」
既にワイバーンの足元のお肉に飛び付いて采配を振るってる校長に聞いてみると、二つ返事を貰えるかと思ったが渋られてしまった。
「ダメですか?」
「んー、太郎くんじゃないとだめなのか? 太郎くんが秘密に育ててた魔法隊も結構なものだろう?」
「そっちを借りても良いならそれでも良いですけど、その場合死人が出るかも知れませんよ?」
私がストレートに言うと校長はぎょっとする。隣で聞いてた一郎弁護士もぎょっとした。
二人にはもう、魔法隊の面々も太郎さんも、どちらも怪物としか分からず、その差なんて伺い知れないのだ。
なのに太郎さんなら大丈夫だけど魔法隊だと死ぬって言われたら、驚きもするのだろう。
「そのワイバーン、レベルだけで言うと私よりも強いんですよ。レベル百十五。レベル六十くらいの魔法隊だと流石にヤバいかなって」
「そ、そんなに酷い差があるのかい? でも君は倒せたんだろう?」
「ええまぁ、でもめちゃくちゃ強いのは事実ですよ。私のスキル盛り盛り乗せ乗せした超必殺技をぶち当てて、カッターナイフで斬ったくらいの傷しか付かなかったんで」
冷やしたら雑魚だったけど。その事は内緒。属性特効がバレたら太郎さん借りれない。
レベル八十越えの化け物である私のスキルマシマシ必殺技が、カッターナイフ程度に落ちる。その事がどれだけヤバいのかは、この世界で今も生きる校長達にも分かるのだ。
「……それなら太郎くんもまずいんじゃないか?」
「いえ、太郎さんなら逆にこれくらい余裕ですよ。それに、魔法隊と太郎さんの差はレベルだけじゃなくて、精霊持ちって点も含めてです。レベルで負けてても、私達には力を底上げしてくれる武装の存在がありますからね」
太郎さんはあなた達が思うよりずっと凄い魔法使いなんだぞって念押ししておく。
正直、ほんとにレベル一からずっと魔法だけを磨いて来た究極の純魔法使いは今のところ太郎さんだけなのだ。
その魔法の威力と操作、そして圧倒的な魔力量は他の追随を許さない極地ある。
「………うむ、わかった。許可しよう。代わりに、肉をいっぱい持って帰ってくるのだぞ!」
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