第15話 ショッピングモール攻略。
「今日もよろしくね」
「「「おなしゃすっ!」」」
ノリの軽い体育会系みたいな挨拶をするのは、先日レベリングで担当したユッキーとアッキーとシッキーである。
前回の合同レベリングに続き、二日後の今日もまたショッピングモールに訪れていた。メンバーは変わらず。
そう前回の事、リカーショップでお好きなようにお酒を持って帰った太郎さんは今、避難所でちょっとしたヒーローらしい。
まぁ元々学校に備蓄してある物資にお酒なんて無いだろうし、割れない様に緩衝材も入れたとはいえ、パンパンになるまで酒瓶詰めたボストンバッグを持って帰ったら、そりゃ勇者か英雄扱いはされるだろう。
ただそのヒーローとなった太郎さんはすこぶる機嫌が悪い。
自分のために持ち帰ったお酒を、避難所の人に持って行かれたのだろう。物凄く機嫌が悪い。
「太郎さん太郎さん」
「………なんだね?」
「大容量の焼酎ボトルとか持って帰って避難所に譲って、ウィスキーとかワインを太郎さんが楽しめば--」
「それだっ!」
「あと、今日は私も確保して家に置いておくので、どうしても楽しみたかったらウチの拠点に来てくれれば--」
「最高かっ!?」
かくして、魔法使いの機嫌が治った。
ちなみに太郎さんも今日こそはと思ったのか、ボストンバッグを四つほど持参してる。
その内二つほどを焼酎ボトルで満杯にして帰るのだろう。
「さて、じゃあ今日は組み分け変えるよ。まずレベリング勢のパワーレベリングを止めて、雪子、春樹、ユッキー、アッキー、シッキー、黎治くん、あと名前知らない二人が組んで、寄って集って腐肉をボコります」
「あ、俺たかしです」
「歩です」
「ほい、じゃぁタッシーとアユミンも組んで腐肉をボコります」
「貢献度が均等になる様に戦ってもらう」
「その後ろで私と秋菜、太郎さんが見守りつつ、物資を集めながら、複数の腐肉が居た場合速攻でボコって数を減らします。以上!」
そうして作戦が開始された。
「オラオラオラァ!」
「ライダーシュート!」
「どうしたどうしたゾンビゲーの中ボスみたいなナリした腐れゾンビさんよぉ!?」
「秘剣! ココロさんの真似した飛ぶ斬撃!」
「たぁのすぃーコレー!」
「えぃっ、やぁっ!」
出て来る腐肉は片っ端から排除され、経験値として消化されて行く。
大型のテナントでマジモンの腐肉を漁っていた十三体の腐肉が出た時はレベリング勢から悲鳴が上がったが、八体ほどを私達で速やかにボコり、しめやかに爆発四散させたらレベリング勢も張り切ってボコり始める。
もはや腐肉の怪物は、危険極まりないモンスターからタダの経験値モブに成り下がった。
「ヒャッハァー!」
「レベリングたのすぃぃぃい!」
「あ、太郎さんあの店お酒置いてません?」
「ほう? ウィスキー専門店だと? 寄らなくては……」
「あ、親父一人で行くなよ!?」
「すぐ戻る」
「秋菜、太郎さんと一緒に行って」
「あーい! おかしあるかなぁ?」
「無いと思うよ。ツマミのナッツくらいはあるかな?」
途中ボストンバッグが四つ全部満杯になった太郎さんの哀愁漂う顔を見て、一度休憩の為にトラックまで戻ったが、殆ど一日かけてショッピングモールに巣食う腐肉の怪物はほぼ一掃出来た様に思われた。
ただ最後にとんでもない腐肉が出て、レベリング勢を下げた上で秋菜に護衛を任せて、私と太郎さんはテンションをブチ上げてソイツに襲いかかった。
「大物来たァァァァァッ!」
「ちょうど物足りないと思っていたのだよ!」
前のような連携もクソもなく、私は必殺スキルまで使って火力を叩き出し、太郎さんも私と一緒に使った風と炎の複合魔法を乱射した。
それでも倒すのに二十分ほどかかったソイツは、ショッピングモールのワンフロアにデデンと居座る腐肉の女王。
軽く一軒家程のサイズがあるガチの腐肉の団子は、触手を伸ばして私達に襲いかかり、私は最近良く使うから名前を付けた風炎斬で触手をぶった斬り、太郎さんは杖から炎を伸ばして剣を作って焼き切っていた。
「打撃、斬撃、風炎……、ココロ・スラッシュ!」
風炎斬を発動しながら斬撃スキルと打撃スキルまで練り込み、そのままココロシリーズを使った現状私の最大火力を腐肉団子の本体に叩き込み。
「灼熱助く暴風よ、灼熱の劫火よ、彼の者を焼き払い灰燼にしたまえ!」
太郎さんは私が使った呪文を丸パクリしながら多分自身の最高火力の炎を肉塊にブチ込んだ。
「もう一発……、斬、打、風炎、ココロ・スラッシュ!」
最後の一発をブチ当てると、腐肉は断末魔も上げずにぐにぐにと暴れ、最後は沈黙してただ燃える燃料になった。
ショッピングモールの一角を真っ黒焦げにしつつもボスっぽい腐肉をブチ殺した私達は、なかなか清々しい気持ちで皆が待つ場所に戻る。全力で暴れるのはやっぱり気持ちがいい物だ。
「ただいまー」
「……ぶぅ、あきなもたたかいたかった」
「いつの間にか秋菜がバトルジャンキーになってる……」
ぶぅぶぅと不満を漏らす秋菜の頭を撫でて、春樹を揶揄う為にポケットに忍ばせていたパイン飴の封を切ってその口に放り込むと、途端にほにゃって笑い機嫌が治る秋菜である。
「ふぅ、ココロ君、なんか自分の名前を付けた技名を叫んでいた様だが、そう言う趣味かね?」
「いえ、本当にそう言うスキルなんです。多分属性的には魔法なんでしょうね。凄い魔力使うんで、必殺スキルって呼んでますけど、魔法に属するからか、技名言わないと発動しないんですよ」
「ほう? 個人名が入ったスキルなんてあるのかね?」
「なんか、だいぶ前に手に入れたスキルがスキル同士を無理やり繋いで作ったみたいなスキルです。名前が無いから使用者情報から名前を付けたとか何とか」
「……興味深いね。その内私も、太郎ファイアとか覚えるのだろうか?」
「それ覚えたら教えて下さいね」
魔力も半分を切ったが、ボスっぽいのも倒したし、あとは良い感じに探索して物資を漁って帰るだけだ。
その段になって男子中学生達は浮き足立って騒いでる。
「剣! 剣無いかな!? 俺もココロスラッシュやりたい!」
「黎治の親父さんにロングナイフ貰ったけど、やっぱ長物欲しいよな」
「俺それよりも秋菜ちゃん達が使ってる電動ガン欲しいんだけど」
「あ、確かここホビーショップあったよな?」
「……ごめんね君達、ここのソフトエアガンは根こそぎ持って行っちゃった」
銃欲しい男子が二人崩れ落ちた。黎治君も欲しかったみたいだ。
魔法剣士志望が三人、魔銃士が二人、残った一人は太郎さんみたいな純魔法使いで行くのだろうか。
「あとココロ・スラッシュは多分無理だよ。前提に【修羅】ってスキルが必要みたいで、取得条件は私も分からないから」
魔法剣士志望も崩れ落ちた。
でも修羅は本当に分からないんだ。取得条件も効果も、全然分からない。
「あ、でも剣術スキルってのも有るよ。取得条件も何となく分かるし、進化条件も分かる」
「……待つんだココロ君。きみ一体いくつスキルを持っているんだね?」
魔法剣士組を励まそうと情報を開示してたら、太郎さんが困惑した面持ちで聞いてきた。
そう言えば数えてないなと思ってステータスを呼び出す。
【ココロ:Lv.40】
【スキル:修羅-ココロ・スラッシュ-ココロ・シュート-上級剣術-超感覚-心眼-不屈-斬撃-射撃-打撃-投擲-火魔法-水魔法-風魔法-土魔法-雷魔法-氷魔法-投擲】
見た瞬間、スキル見にくっ!? って思ったら。
-【修羅】が発動します。
【ココロ:Lv.40】
【パッシブスキル:修羅-上級剣術-超感覚-心眼-不屈-斬撃-射撃-打撃-投擲】
【アクティブスキル:ココロ・スラッシュ-ココロ・シュート】
【マジックスキル:火魔法-水魔法-風魔法-土魔法-雷魔法-氷魔法】
-【修羅】は使用者を応援します。
なんか、修羅がスキルを見やすくしてくれた。あと応援してくれた。やっぱり何のスキルかよく分からない。
でも、修羅ありがと。いつも助かります。
「……えっと、魔法含めて十七個ですね」
「え、チートじゃん」
「やっぱココロさんパねぇわ」
まぁ微妙に修羅がチートスキル臭いから自覚はあるけど、スキルの数で言うとそうでも無いと思うんだよね。
「秋菜達もスキルの数なら似たような物だよ?」
「え、ええ。まぁ、全部で一応、十一個あります」
「俺も十一個だな」
「あきな、えっと、じゅう、よんこ!」
「……えっ!?」
ちょっと予想外の事に、秋菜を連れて皆から離れる。
十四個も何のスキル持ってるんだこの子。
「秋菜、ちょっとおねーちゃんにスキル教えてくれる?」
「うん、いーよー! あのね……」
【アキナ:Lv.32】
【スキル:心眼-狙撃-魔弾-射撃-斬撃-打撃-索敵-火魔法-水魔法-風魔法-土魔法-雷魔法-氷魔法-投擲】
と言う事らしい。
秋菜強くね?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます