第27話◆◆④ウラジミールの進化◆◆
「だがどうも納得いかねえ。」
とりあえずクロヴィスの説明を一通り聞いたが、軍がクーデターを起こすような無能な国王では無さそうだし、治世もまずまず安定していたようだな。
クロヴィスの話じゃ軍の上級職も、国王に対して心服していたようなのだな。
それと、軍の1/3が反乱に加わり、尚且つ幹部の殆どが荷担したというのに、計画が杜撰で、いくら優秀であろうと、クロヴィスのような「繰り上がり当選」の若僧が指揮する正規軍を撃ち破れないでいるってのも腑に落ちねぇ。
「それは私自身分からないのです。優秀な方々ばかりですから、私などに防げるのが不思議なのです。」
「それで、反乱軍の要求って何だ?」
当たり前の話だ。
何かに不満があるから反旗を翻すわけだ。
「それが何もないのです▪▪▪何度か説得を試みたのですが、感情を失くしたかのように何の反応も無いのです▪▪▪」
歯切れが悪いな。
おっと、ウラジミールじゃないから頭を潰したら確実に死ぬからな▪▪▪
と考えるのに0.00000003秒。
いや、測ってないから分からんな。
「交渉の要求も無いのか?」
「ありません。」
「ふん▪▪▪」
俺は空間を掴みドアノブを回すようにして引いた。
すると、そこにドアがあるかのように空間が開いた。
その先にはクリスタとフロリネが居た。
「おい、こっち来な。ん?ウラジミールはどうした?」
クリスタが指差す先を見るとウラジミールが頭に矢を生やして倒れていた。
「はぁ、何時までやってんだ?」
「存在が許せないのよ!」
と、倒れているウラジミールに唾まで吐きつけた。
「フロリネェ、女の子がそんなことしちゃ駄目よぉ。」
と、クリスタが咎めるが、クリスタ自身本気で思っている訳では無さそうだな。
ウラジミールに用が有ったので、ウラジミール自身の回復を待たずに俺の呪を発動して回復させた。
「矢▪▪▪矢が刺さっても▪▪▪頭に刺さっても死なないのですか? ア、アンデット!」
「じゃねえよ▪▪▪」
面倒くせぇなぁ▪▪▪
「本当でございますね、ご主人様。」
「また言ってたか?」
「はい、明確に。」
「こいつはな、元々お前さんと同じただの人間だったのだがな、俺を殺そうとしたからな、情報を探るのに頭のなかをいじったら呆けになった。のたのた後をついてくるからもう一度頭をいじって使いッ走りにしたんだ。その時に俺の呪を分けてやったからな。死ぬ前に自己再生するっつう特技を身に付けちまったんだな。」
と説明してやったが、まあ、なかなか飲み込めねぇだろうな。
「まあ、いいか▪▪▪ウラジミール。」
「はい、ご主人様。」
「ちょっと探ってこい。」
俺はそう言うとウラジミールの眉間に人差し指を当てた。
そこからクロヴィスから聞いた情報をウラジミールの頭に直接流し込んだ。
「はい!明確に了解しました!」
そう言うなり鼻を高く上げ、クンクンと匂いを嗅いだ。
「はぁ、ビッチ臭くてかなわないなぁ▪▪▪」
と言いながらチラリとフロリネを横目で見た。
もちろん、すかさず矢が飛んできたが、意外にもヒラリと交わしたウラジミールは、そのままあっかんべェをしながら走り去った。
「あのキモ顔ぉっ!」
フロリネが悔しそうに地団駄踏んだ。
俺とクリスタ、アンブロシウスは「おおっ!」と驚きの声を上げた。
ウラジミール、進化してるなぁ。
◇◇◇
現在ブリアラリア王国は、国土の40%を反乱軍に占領されているらしい。
だが、クロヴィス率いる正規軍の奮闘で、徐々に奪還に成功しているらしいのだが、占領された地域の荒み様はすざまじく、まるで魔物の侵攻を受けたようだと言っていたな。
おそらくだが、魔物、それに類いするものの仕業だと思うな。
だが分からんのが、何故侵攻が弱まったのかだ。
それと、首謀者だ。
わざわざ反乱を装って侵攻を図るなど、目的が無ければ面倒この上ない。
そうか、だから穴だらけなんだな。
正体を隠さずにやっていれば、今頃この国は滅亡していたかもしれんな。
じゃあ、その面倒な目的は何だ?
まあ、何でもいいか。
とっとと片付けて「トゥナ」を食う。
それが俺の目的だからな。
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