第26話◆◆③ガンゾウとブリアラリアの若き将軍◆◆
「ご主人様ぁ、ほんとにダークエルフなんか連れていくのですか?あんな性悪連れていっても良いこと無いですよ?」
ウラジミールは「顔の気持ち悪い男」と言われたことが、よほど気に入らなかったのだろう。
ずっとぶつぶつ文句を言っている。
「ちょっと!顔の気持ち悪いウラジミール!」
「いちいち枕詞のように「顔の気持ち悪い」を着けないで下さい!この性悪のダークエルフ!」
「うるさい!顔の気持ち悪いウラジミール!ぶつぶつ言ってるとその気持ち悪い目玉を射抜くわよ!」
「やれるものならやってみなぁ!」
と言い終わるかどうかというタイミングで、ウラジミールの両目に矢が突き立った。
ああ、ウラジミール▪▪▪余程ダークエルフが嫌いなのだろうが、もう三度目だぞ?
いくら再生すると言っても、その都度待つのにも飽きてきたぞ。
フロリネは、最初の一撃は躊躇したが、復活するのを目の当たりにすると、むしろ挑発を重ねてウラジミールに矢を放った。
「おい、フロリネ、もう飽きたぞ。」
「そうね。私も飽きたわ。でもこいつの顔はイラッとするのよね。」
「それ分かるわぁ!」
とクリスタ。
「私も彼は写したくないですね。」
とアンブロシウス。
再生途中のウラジミールには聞こえないだろうが、クリスタもアンブロシウスも同意の言葉を連ねた。
ウラジミール、良かったな聞こえなくて。
◇◇◇
残念ながらブリアラリア王国の国境までの道中には、ドリアードが棲む森は無かった。
いや、森は有ったのだが、ドリアードが居なかったのだな。
けっこう大きな森も有ったのだが居なかった。
フロリネは頻りに「おかしい?これ程の森に居ないわけが無いわ?」
と言っていたが、居ないものは居ないのだな。
「ふんっ、当てにならない淫乱デカ尻だ!」
と、ウラジミールが言った途端に、ウラジミールの眉間に矢が突き立った。
「だからもう飽きたぞ?」
と言えば▪▪▪
「本気で殺したいのだけど!」
との事だ。
まあいいさ。
フロリネの居た森を出て、7日でブリアラリア王国に着いた。
ここから黒洋海へ出るには、もう7日ほどかかるらしい。
だが今回、建前的にはギルドからの依頼の仕事な訳で、一応依頼者の元へ顔を出さないわけにはいかないのだな。
で、その依頼者というのが▪▪▪
「良く参られった▪▪▪兄は息災であるっか?」
と語りかけてきたのは、ブリアラリア王国国王、ワッチナル二世だ。
そして、この国王が「兄」と呼んだのがヘリオスなのだとさ。
あのハゲ親父が王族?しかも、国王の兄だという▪▪▪
じゃあ何かい?
経緯によってはヘリオスが国王だったって事かい?
まあ、俺が魔王候補って言うなら、ヘリオスが国王だったかも?ってのは余程真実味が有りそうだぁな。
一応国王の前に出るってんで、俺とアンブロシウス以外は外で待機させた。
なにせ耳のとがった浅黒いダークエルフと羽根をパタパタさせて飛ぶ青龍、あと顔の気持ち悪いウラジミールだからな。
むやみに人目に晒すものでも無かろう?
「ああ、ヘリオスなら元気だ▪▪▪頭の光具合に磨きがかかってきたぞ。」
と、軽口を叩いたら、
「無礼者!国王陛下に向かってなんたる非礼!」
と煩いのが出てきた。
「ああ、すまんな。こんな口しかきけんのだよ。」
面倒くせぇ。
無意識に空間呪で葉巻を引き出し、指先に火を点して葉巻に火を着けた。
もちろん、人間どもは目を丸くしていた。
「ああ、すまんな。俺は魔人と呼ばれる者らしくてな。まあ、自分から呼んでくれとは言ってないのだがな、異世界からスリップしてきたら死ねない体になっていたんだな。で、なんやかやでこんな事が出きるようになってたわけだ。
だからな、そこの偉そうな口を叩いたお前、死にたくなかったら黙ってたほうが身のためだぞ?
それと国王さんよ、ヘリオスの弟だってぇから協力しようと思ったが偉そうなこと言い続けるなら、俺がこの国滅ぼすぞ?」
そう言って空間を引き裂いて見せた。
その先には、荒涼とした月面のような暗い砂漠が広がっていた。
「まっ!魔物っ!」
「そうだな。あながち間違いではないな。」
「ま、待たれい!兄からそなたの事わっ聞いておるっ!臣下が失礼したっ!」
ほう、バカ殿かと思ったが、意外に聡いようだ。
「いや、分かってくれれば良いんだ。ついでだ、こいつはアンブロシウス、ルピトピアの魔鏡だ。」
アンブロシウスが全身鏡のミラーマンになって深々と一礼した。
「ル、ルッピトピアの魔鏡?魔道三器っと呼ばれるあのルッピトピアの魔鏡ですか!」
どうでもいいが、いちいち「ッ」が入るのはどうにかならんか?
「ほんとに聞きづらいですね。」
アンブロシウスが呟いた。
「ん?声に出てたか?」
「ええ、明確にね。」
ウラジミールが居なくても突っ込まれるな。
「まあそんなことはどうでもいい。俺たちはヘリオスからの依頼をサクッと終わらせて生のトゥナを食べたいだけだ。」
「そ、そうかっ、ならばっ、私からっ説明っしようっ。」
「いや、王様、聞きづらいから他の奴で頼む。ああ、さっきの頭ガチガチの太鼓持ちみたいなのは駄目だぞ。」
と言うと、太鼓持ちが顔を真っ赤にしてなんかギャァギャァ言い始めたので、喉に金縛りをかけた。
まあ、死なないように呼吸は止めてないがね。
で、王様の代わりに出てきたのが軍の将軍だという男なのだが▪▪▪
「お前さん、歳は?」
「19です。」
「19で将軍?優秀なのか?王様の男妾なのか?」
「どどちらでもありません。」
よほど男妾と言われたのが恥ずかしかったのだろう、顔を真っ赤にしたが、キッと睨んだ目は、芯の強さを感じさせる光があった。
「ガンゾウ殿っ、その者はなっ、歳の割りには優秀なのにはッ違いないッが、上の者共がッ、反乱に荷担ッしたり、それとっ戦って戦死っしてしまってっおるのだっ!」
聞きづらいったらありゃしない。
「分かった分かった、冗談だ、目の光を見りゃぁわかる。で、名前は?」
「クロヴィス▪フイヤードと申します。」
「そうか、クロヴィス?誰かに似てるな?誰だ?」
「そんなことよりガンゾウ殿、早速軍議を!」
「いや、必要ねぇよ。ぶっ潰す奴等とその居場所を教えてくれればいい▪▪▪」
クロヴィスに抱いた印象が、誰かに繋がる▪▪▪
気になるが、まあそのうち分かるだろう。
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