第8話◆◆⑦ガンゾウとウラジミール◆◆

ふらふらと付いてくる。


何が?誰が?


俺に頭のなかをまさぐられたウラジミールだ。


呆けたような顔で付いてくる。


角馬を駆けさせても、気が付くと後ろに姿があった。


「かわいそう・・・」


エルゼがそう言ったが、俺には既にその感情はない。


「なんとかならないの?」


と言われても、何とかしてやろうと思うことはないのだが、まあ、このまま付きまとわれても面倒臭い。


俺は角馬から降りてウラジミールに近寄った。


気持ち悪いニタニタ笑いを浮かべて俺を見ている。


ウラジミールの両方のこめかみに人差し指を当ててズブズブとねじ込んだ。


ウラジミールの両目がグリンッと反転した。


5つ数えて指を抜いた。


ウラジミールの目が元に戻った。


いや、血走っていた白目がうっすらと青みを帯びたような澄んだ目になった。


ウラジミールはパチパチと瞬きするとこう言った。


「ご主人様、ありがとうございます。何なりとご指示を。」


方膝を突きながら言うものだから、エルゼもヴァルターも一瞬ぽかんとした。


「ああ、お前の名前はウラジミールだ。今日からお前は俺たちの身の回りの世話をすることが仕事だ。幾つか能力を分けてやったが分かるか?」


「はいご主人様。明確に理解いたしております。」


「ならいい。とりあえず自分で角馬なりなんなり調達してから合流しろ。」


「はいご主人様。では、後程・・・」


そう言うとウラジミールは、クンクンと鼻を高くして臭いを嗅ぐ動作をすると、一礼して走り去った。


「どうなったのですか?」


ヴァルターが気味悪そうに聞いてきた。


「なに、役立たずに付きまとわれるくらいなら役に立つように頭のなかを作り替えて使ってやろうと思っただけだ。」


「頭のなかを作り替えるって!そんなことは神に対する冒涜です!」


と猛々しく抗議するヴァルターだが、腰が引けている。


「俺は魔王一歩手前の魔人だからな。神に対する冒涜は本望だ。つっても、魔王に成りきる気も無いがな。」


そう言って葉巻を出し火を着けて角馬に跨がった。


ヴァルターに葉巻を一本差し出した。


それをヴァルターは当然のように受け取り、自ら火を着けた。


「信仰上酒や葉巻は神に対する冒涜じゃないのか?」


旨そうに葉巻を噴かすヴァルターに嫌みを言ってやった。


派手に噎せていた。


「さあ、行くか。」


俺達は再びルピトピアへ向けて角馬を歩ませた。

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