第4話◆◆③ガンゾウと空腹の少女◆◆

河原で釣糸を垂れた。


糸の先には、町の鍛冶屋に作らせた精密な釣り針が付いている。


餌は川虫の類いだ。


手製の浮きがピクッと反応する。


それに竿を合わせる。


『かかった!』


良い引きだ。尺物だろう。


釣り上げた魚は、岩魚のような魚だ。


釣り上げて直ぐにエラを引っこ抜き血抜きする。


手際よく火を起こし、多目の塩をまぶした魚を、手近な枝を削って作った串に打ち焚き火で炙る。


程無く香ばしい香りが漂う。


全部で五匹、全な尺物だ。


血抜きはしたが、腸は残してある。

この苦味が良い。


魚を食べる度に思う。


『米が食いたい』


そう、この世界、少なくともこれまで『米』に出会っていない。


米が無ければ『日本酒』も無いわけで、『和食』的な繊細な料理など有るはずもない。


もし、『米』が食えるなら、ギルドに預けてある金を全て渡しても悔いはない。

そもそも、『食う』為に必要としているだけなのだから。


「何か用か?」


俺は振り返りもせずに後ろに立つ『女』に声をかけた。


見ずとも気配でわかる。


危険な匂いはない。


「あ、あの・・・」


振り返ってみるとまだ子供だった。


何か宗教的な儀式の服だろうか?


「食うか?」


俺はほどよく焼けた串を少女に差し出した。


「い、良いの?」


「冷める、早く食え。」


そう言うと、少女は小走りに駆け寄り、魚を受け取ると『はふはふ』良いながら貪るように食べた。


あっという間に一匹を食べ終えると、足りなさそうに炙られている魚を見つめた。


「ほら。」


そう言ってもう一串差し出した。


少女は躊躇い無く受け取ると、またしても『はふはふ』良いながら食べた。


食べ終わると『ホォぉぉっ』と大きな溜め息をついたかと思うと、コクりと首を項垂れた。


「おい?」


声をかけたが返事がない。


『スースー』と気持ちよさげに寝息をたてている。


「座りながら器用なこった。」


俺はそう言って少女を横にしてやった。


「どれ。」


そう言って少女にくれてやった分の魚を補充しに、また川縁に立ち、釣糸を垂れた。

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