第12話


学校の帰り、ビルの地下駐車場の警備・誘導係としてバイトをしていた少年は、その職場の同僚で1個下の後輩である男から付け狙われていた。

平凡な顔が好みなんです!とかなんとか。


その日は運悪く、誰もいい準備室で鉢合わせ、深夜のテンションにより興奮した男に迫られ、少年と違い良く鍛えた黒々した身体に敵うわけもなく、最後まで致されてしまった。


実は、その同僚、来る前に友人に酒を飲まされていたらしい。息や、行為の間に流れる体液から滴ったアルコールにより少年は乱れ、行為は一時間にも及んだ。

がたがたと震える姿は皮肉にも、後輩を煽ったらしい。しかし、その後……いわゆる賢者タイムに入った後輩は酔いが醒め、焦り、怒濤の勢いで去っていった。


「はぁ……のども腰も腹もいたい……悪い酒のんだな、あいつ……」


安っぽい林檎の味が口に広がって、ねちょねちょと流れていく。後輩と違い、アルコールがすべては抜けていない少年は、ゆらゆらおぼつかない足取りで下宿屋へと歩を進めた。




「臭うな」

「ですよね……すみません、部屋で寝てきま……」


開口一番に言われたことばに苦笑し、自室に向かう。その言葉を言って少年を困らせた張本人は、


「ぐっ……?!」


タートルネックの首部分をわし掴んだ。


そしてそのまま何も言わず、ずんずんと風呂場へ引っ張って行く。




「仲が良いなぁ」


一部始終を見た、少年の叔父は、最近元気になった甥と、甥に静かな優しさを送る騎士の姿を見守っていた。


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