第5話
あれに“拾われ”てからもう、こんなに経ったのか。
半分が輝く白い月を見上ながら、ライオネルは思った。
(あの夜は、満月だった)
痩躯に鳥を思わせる服を身に纏った、自分よりいくらか背の小さな男。
夜に紛れこみそうに揺れる藍を追って、小さな家に飛び込んだ。その時から、ライオネルの行動範囲は急速に拡がっているように思う。
もう要らないとあの女に放り出され、辿り着いた(後から知った、"発展場"と言うらしい)場所で夜を過ごした。澱んだ気の中で、しかし逃げるすら無かったと言うに、男の言葉に引っ張られて来て。
騎士として適切でない扱いをされた学園に居たときより、欲に塗れた目に当てられた公園に居たときよりずっと、自由になった。
イチロウは縛り付けるようなことをなにも言わない。
ライオネルはその足で、日のあたる暖かな場所を転々としていた。
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