第二話 散歩と言う名のお使い
「やっぱり、中世のヨーロッパ感のある街だな〜、竜車とか特に、」
「なにブツブツ言っているのよ? まるで、違う時代から来たみたいな事言っているのよ」
「んまぁ、実際そうなもんだからな〜」
体調も回復してきたので、街を散歩している。医者が言うには、街や思い出の場所を見れば記憶が戻るかもしれない。との事なので、買い物も兼ねて街を散歩しているのだ。
「えっと、買う物はって、文字読めねぇ〜」
「ハルトは文字まで忘れてしまったのよ?」
「そうみたいだな。覚え直しは結構大変そうだな〜」
(日本語は覚えているけど、)
「控え書きをフィラに見せるのよ、買う物は、りんご、とうもろこし、魚、パン、なのよ」
「アイリスは、この具材でなに作るんだよ? て言う疑問はさて置き、魚の種類はなんて書いてある?」
「なに言っているのよ? 魚は魚なのよ、魚に種類なんて無いのよ」
「あっそうですか……」
まさかのこの世界には魚に種類が無いという衝撃的な事を耳にしつつ、まさか肉にも種類が無いのかもしれないなんて考えていたら、
「着いたのよ」
「おう、このスーパーっぽいこの感じ。嫌いじゃないぜ!」
「すーぱーって、何がすごいのよ? ハルトの使う言葉は難しくてちょっとめんどくさいのよ」
「俺の使う言葉めんどくさいか〜、ってのは置いといて、スーパーはスーパーマーケットって意味」
「すーぱーまーけっと? どっちにしろ、解らないのよ」
中に入ると普通にカゴや、カートがあり、この世界にもあるんだな〜、と関心しつつ買う物をカゴに入れていく、
「やっぱり魚は種類があるんじゃん!」
「何度も言わせるんじゃないのよ! 魚は魚で種類は無いのよ!」
この世界生まれの人には分かりずらい理解をした所で、あれ? これ変な奴買ったら味と食感が大変な事になると言う危機を察知する。
ここはしっかり俺が具材から作る物を考察しながら俺が補導しなければ、と言う使命感を抱いていた事を他所にフィーリアは、
「魚も買ったし次に行くのよ」
フィーリアがカゴに入れたのは、
「イカ!? おいその魚はさすがにまずいだろ! イカなんて刺身と寿司ぐらいしか聞かねぇーぞ!」
「何を大きい声で言うななのよ!? 魚は魚しか無いのよ、どれを買っても味は同じなのよ! まぁ魚は当たり外れがすごいのは感じるけれど、」
「魚の当たり外れの問題は、魚に種類があるからって言うので解決しませんかね?」
「しないのよ」
これは根っからそう信じて刷り込まれているタイプだ。この手の奴は基本、何を言っても埒が明かないので、魚の種類の話は終わりにする。
「ハルト、なにボーッといているかしら? 早く会計するのよ」
「あ、ああ、わりぃー。んって、本に数字書き込むとかどんな会計方法だよ!」
「あれは、呪術の一種なのよ。本に魔法陣が組み込まれていて、書き込んだ数字に合わせて品名と値段が出てくる仕様なのよ」
「それだけ聞くと、魔法陣ってマザーボードかその類の物にしか聞こえねぇーなぁ」
「会計も終わった所で帰るのよ」
「おう、わかった!」
こうしてハルトとフィーリアは、帰路に着く。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
帰る途中、ハルトとフィーリアは仲良く手を繋ぎ楽しく会話していた。がなんだか人がなんだかざわついている。この世界では普通なのかと無理やり納得するが明らかにおかしい臭い、焦げ臭いが鼻を通り抜ける。
「ん? なんだが人だかりができていなって、火事かよ! フィーリアのせいで下向いてばっかだったら煙に全然気づかなかった」
「フィラのせいにするななのよ! でも見過ごせない事なのよ」
とフィーリアは燃え上がった炎をじっと睨み、「困ったのよ」と呟く。ハルトはその言葉に思わず小首を傾げて、フィーリアに提案する。
「なんで見過ごせないのか解らんけど、まぁ良い。フィーリアお前精霊なんだろ、水の魔法で鎮火出来ないか?」
「出来ないのよ、水の魔法はあまり得意で無いのよ! フィラが得意なのは、日と月属性の魔法なのよ!」
「よ、日と月!? なんかカテゴリーエラーしてる気がするが?」
なるほど、フィーリアが困ったと言っていたのは水属性魔法は基本使えないということ。いよいよ面倒事になってくる、ハルト自分の顎から頬に右手を添えて真剣に考え始めるとフィーリアがとある提案を持ってくる。
「気のせいなのよ! そんな事より、ハルトなら行けると思うのよ!」
「なんで俺なら行けるだよ? 魔法なんてさっき聞いたばっかりなんだぜ」
「ハルトは水魔法に適正があるのよ、初見でも行けるかもしれ無いのよ。フィラも手伝うからやって見るのよ!」
「わ、わかった。よし、水を出て来い!」
魔法も詠唱も何も知らないのでとりあえずそれっぽい事を口にする。すると胸の辺りが謎の水が揺れ動く様な感覚になる。決して気持ち悪い訳では無い。ただ違和感を感じるだけだ。そしてハルトは確信した、この感覚こそが水のマナの正体だと、
「や、やばい事になったのよ……」
「え?」
その瞬間滝のように水が落ちてきた。その大量の水は瞬く間に人だかりを飲み込んで、津波を連想させる程の洪水が発生し、大通りに流れ込んだ水は人や竜車を無差別に飲み込み、建物は歪んみ今にも崩れてしまいそうだ。なんなら二、三戸は倒壊している。もちろん火事は消火された事は言うまでもないが、
「ストップ! ストーップ! 消えろ! 水よ蒸発しろ!」
そして今度はあれだけあった水が全て蒸発した。これで一件落着かと思いきや、今度は気化熱で周辺の温度は暴落し、夏の時期にも関わらず遂に氷点下まで行ってしまった。
「さっむ! 半袖半ズボンでこの温度は流石に厳しすぎ。ってちょっと水に命令しただけなのに、滝のように落ちてくるとか、魔法最強過ぎるだろ」
「これは単にハルトの水魔法の適性が高すぎる証拠なのよ。ハルトが水魔法を上手く操るまでしばらく時間が掛かりそうなのよ」
「しばらくどころか一生掛かっても無理な気がするんだけど」
「少し待つのよ。日魔法で対低温の保護を付与するのよ」
「最早何でもありだな、魔法って」
そんなこんなありながらまた帰路に着くのであった。
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