第三話 いつも飽きることの無い異世界生活

 この世界に来てから(記憶を失ってから)一週間が経過した。そして今日も朝から一人だけ異常なテンションで、活動している人物がいる。その人物とは、、


「夏だ! プールだ! 水着だーー!」

 

「ちょっと何言ってるか、分かんない。でも朝から元気なのは、良い事よ。いい子いい子」


「薄い反応&良い子評価って、なんかへこむ評価。しかし、そのへこむ評価を脱却すべく、今日もハイパーウルトラ元気に生活し、日々テンションアップを心掛けて生活するのであった!!」


「これ以上テンションあげたら、心臓がショックを起こして死ぬのよ、」 


 そう、その人物とは、カシワハルトだ。自分でも何故ここまでテンションが高いのか解らない。しかし、元々高いのだろうと、頭の中では処理していた。そう理解しているつもりなのだ。



 いい加減、一週間も経てばこの世界の風景にも目が慣れてくる。土地勘もある程度はついてきた。


 一方、言語の学習に至っては、さっぱりと言った所だ。中学時代の英語は得意だったが、この国(この世界)の文字に関しては脳が我関せずの姿勢を一度たりとも動かない。


 これは何を何度繰り返しても無駄としか思えない。

 せっかく空間単位で、語学留学? しているのに非常にもったい無い。なーんて事を考えているとフィーリアから、



「ハルト、アイリスから買い物のお使い要請なのよ。急いで準備のよ、レデイを、それも精霊のフィラを待たせるなんて、契約者であっても、やってはならないことなのよ」


「おう、分かった。今準備する」


 いつも通りアイリスからお使い要請が入った。お金を入れた大きめの鞄を左手に、フィーリアを手を右手に握り、扉をフィーリアに開けてもらいつつ、『ドアをレデイに開けさせるなんて最低な奴なのよ』と言わんばかりの目を浴びながら、外に出る。





 買い物の帰りの途中。すごく小さい声で、(遠くだから)カツアゲしている声が聞こえた。俺はああいう奴らに関わると録な事にならないと判断した俺は極力自然体を装った。誰かが解決してくれる事を信じて、





※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※





 その日の夜。玄関のドアに甲高いノックの音が響いた。その時リビングでは、誰が出るかと言うどうでもいい事で議論する。



「私は出ないわよ」「俺は嫌だぜ」「フィラは行きなくないのよ」


 と、この通り意見どころかタイミングすらも合ってしまうこの状況以下にして乗り切るか、


「俺さ、今日お使い行ってきて疲れてんだ、だからね、ね。アイリス」


「右に同じなのよ」


「私だって掃除洗濯に料理もやっているだから、それこそ私の方が疲れていると思わない?」


 とハルトとに向かってニヤニヤしながら自慢げにアイリスワールド理論を展開していく。この顔に対しハルトは「えぇ」と少し引き気味になりながらアイリスの言っていることも間違ってはいないので結局ハルトが出る事になった。


「ハルト、ぐっちょぶなのよ」とフィーリアが満面の笑みで言っていたので


「お前も道ずれだー!」


「ぎゃーあなのよ」

 無理やり引っ張り出してきた。



 ドアの鍵を開けて、ドアノブを回し引き開いた瞬間。刃渡り15センチの位のナイフを突き立ててきた。一瞬驚いた表情を見せたフィーリアだったが、すぐさまフィーリアの魔法で撃沈。後ろに4、5人男がいたが、直ぐに尻尾巻いて逃げってた。


「今のなんだったんだ?」


「さぁ、解らないけれど、不気味なのは確かなのよ。ドアを開ける時フィラを無理やり引っ張り出したのは正解だったのよ」


「そうだな」




「ええ! そんなことがあったの!」


 今まであったことをアイリスに伝えると今にも泣きそうな顔で心配してきた。その凄まじいの気迫のあまり気持ち的に一歩引いてしまう。まあ嬉しいんだけど。


「怪我は無い? 怖くなかった? 寝るの怖くない? もし良かったら今日一緒に寝る?」


 何この子、超過保護。


「フィーリアが直ぐにやっつけてくれたからなんともないよ」


「ほんとにホントに大丈夫? 分かった、頭なでなでだけで済ませてあげる」


「え?」


 するとアイリスが「怖かったね、もう大丈夫よ」と言いながらハルトの頭を急に撫で始めてきた。その急すぎる行動にハルトは困惑と恥ずかしさで耳まで真っ赤にしてしまう。


 するとフィーリアから突然頭の中に、と言うよりか心の中に直接フィーリアの声が響いた。


(契約している精霊と人間とではこんなふうに心の中で会話ができるのよ。まあそんな事は置いておいて、アイリスはいつもこんな感じだから無駄に気を使うことは無いのよ)


 との事らしいので気を使わない方向性で行く事にした。


 やはりそんな態度を取っていると、相手にバレる物だ。「私は心配しているです!」と、少し声を張り上げて放った。


「わりぃわりぃ」


「むぅー」


とアイリスは頬を膨らませてくる。なにこれ可愛いなんて思いながら夜の襲撃イベントは幕を閉じた。





※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※





 その晩寝付きが悪かった。さっきの事で内心どこかで怖がっているのだろうか、でもフィーリアが隣にいるからよっぽどの事がない限り死ぬ事は無いだろうと、心に言い聞かせながら閉じない瞼を無理やり下げる。


「そういえば最近何でもかんでも無理やりやっている事多いよな〜。さっきのフィーリアもそうだし」



 一度、風の噂で聞いた事がある。寝付けない時、最大限妄想でも想像でもして、頭の中で自分の世界に入る。そうしていると、いつか目を覚ましたように我に帰る時が来て、もう一度自分の世界に入ると、いつの間にか寝ているという話だ。


 個人的には、羊でも数えていた方が良いんじゃないかとも思ったが、まぁ上手くいったら、儲け物だと思い睡眠法の賭けに出た。


 噂になるだけあって、そこそこ効果はあった。想像してよりも早く寝付けた。いい方法知ったなと、少しばかり気持ちが高ぶった。そうして、翌朝。





「ハルト! ハルト! ハルト!!」

 黒髪美少女もといアイリスが俺の名前を叫んでいた。


「あれ? どうかしたの?」


「どうしたの? じゃないわよ! ハルト記憶を失ったんでしょう! って言っても覚えてないよね。私はアイリスよろしくね」

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