序2

 世界は滅んだ。

 人類は誰一人残ることなく、かつて生きていた他の動物たちもあらかた死に絶え、植物と一部の動物が異常発達し蔓延っている。

 それはこの、かつては大国の中心都市であった地域でもそうだった。道路のアスファルトは次第に風化して剥がれ、その痕に草がびっしりと生えている。同じように風化していくビル群は、絡みつく植物のおかげでどうにかもとの形を保っているように見える。自動車も鉄道も動かず、人の影も当然見えない。時折、動物の声や風の音が聞こえる以外、街は静まり返っている。

 でも、なぜだろう?

 時折、二本脚で歩く足音が聞こえる。

 時折、かつてそこで使われた言葉が聞こえる。

 時折、いつかそこにいた「ひと」と同じ形をした影が、風とともに街を駆けていく。

 その足音は軽く、その声は少年とも少女ともつかず、その体躯は細くしなやか。

 それは彼か、はたまた彼女か。

 そして、それが現れて、幾許かの時が経って。


 ――もうひとり、「それ」は現れた。

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