廃都のふたり

朽葉陽々

序1

 ――きみに、会いに行かなくちゃ!


 その想いが脳を揺らして、私は目を覚ます。

 灰色のビルの、たぶん三階か四階。日の入る端っこの方、短い草がいっぱい生えてるところ。波をきらめかせながら登ってくる朝日の眩しさに、私は目をぱちぱちさせた。

 淡いグレーのパーカーの袖をぐっと捲って、思い切り伸びをする。そろそろ伸びてもさもさとしてきた白い髪を、手櫛で整える。寝るときは脱いでいた黒いタイツを履き直し、濃い目のグレーのプリーツスカートの裾がしわくちゃになっていたのを整える。明るい朱色のハイカットスニーカーの紐をきっちりと結んで、私はビルから、隣の建物の屋上へ飛び移る。そうしたら、木の根っこを伝って地面へ。

 今日はどこまで行けるだろう。どこまで行けば、きみに会えるだろう。

 わくわくした気持ちに、強い追い風が吹き抜けていった。

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