おわりに

 あてはこの家族が気の毒でならん。この世には義理人情を知らんし、理解できん人間がおる。善意がまるで通じん。嘘でかためた言葉を使い、どんな手段でも他人の持ち物を奪おうとする人間はおる。彼らには正しいも間違いも、その概念すら持たへん。目の前の快楽だけが大事。そら絵江さんには太刀打ちできへんわ。

 絵江さんは、家の歴史を根底からゆがめられはった。微意はさぞやうれしかろ。微意から仕掛けた争いに絵江さんは陥落や。これもまたミサイルを使わん戦争や。どんな手段でも勝ては正義の世界や。残念ながら、これも真理や。微意は、最初から絵江さんの土地や地位、金銭を奪うつもりやったのやな。


 朝日差す中、あては平らなままの布団をたたむ。

 血の跡どころか寝た形跡もない……恐らく三人の遺体はこの山のどこかにあるのやろ。殺されてからは、なんぼ警察や世論に味方をしてもらっても、生き返ることはできへん。

 あてはためいきをついて、お経を唱える。

 なむあみだぶつ、なむあみぃ、だぶつぅ。

 それから、つくえに向かってこれを書いた。今の若い人にはこの無念が通じるやろか。


                             了 



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

鎮 魂 鷹鷺鴛鴦 @wrathbird

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る