第9話:白金獣魔師は免除される
激しく砂埃が舞い上がり、あたり一面がホワイトアウトしてしまった。
やがて晴れて視界がクリアになると、俺がファイヤーボールをぶっ放した先は悲惨なことになっていた。
カカシの姿は跡形もなく消えており、その周りには隕石でも落ちてきたのかと見紛うほどの大きなクレーター。さらに穴の周辺は高熱でガラス化してしまっていた。
「な、な、な、なんですかこれは!? ユートさん、あなたいったい……!?」
「ケホッ、ケホッ……ユート、こんなに強かったんですか!? なんで私に隠してたんですか!」
「え、ええと……? 白金獣魔師らしいね……。いやまあ、俺もビックリしてるんだよ。それで、これ抑えめなんだけど二発目はどのカカシに撃てばいい?」
カカシが消えてしまったので、次の的を探した。
幸い、この練習場にはまだ無事なカカシはたくさんストックがあるみたいだ。
だったんだが——
「け、結構です! もう十分、十分わかりましたから!」
「え、でもこれじゃまだ力を出しきれてないんだが……」
「合格基準に満たしていればなんでもいいですから!」
「そうなのか。まあ、俺としてはその方がありがたくはあるけどな」
突然の環境の変化で疲れが溜まっているということは否定できない。
本当は休みたいのだが、これからの生活が立ち行かない状況ではゆっくりしていることもできず、試験を受けているわけだ。
ありがたく申し出を受けるとしよう。
「それで、次の試験ってなんだっけ。ジョブ固有試験? それって何をやるんだ?」
「二科目は、ジョブごとに能力を満たしているかを確認するものですが……ユートさんは魔法師でしたっけ」
「いやテイマーだけど」
「えっ……は!? ああ……そう言えばそうでしたね……テイマーだと特に能力的にはアレなので無職の方と同じ内容になりますねぇ……」
「なんか
「ぷらちなていまー? 初めて聞きますね。どんなジョブなんでしょう……?」
「プラチナテイマー!? ユート、それって本当なんですか!?」
「うん? レーナは何か知ってるのか?」
「私も初めて聞いたので知らないんですけど、汎用ジョブの前に名前が付くのは専門職ですよ! 私も聖女じゃなくて
ああ、そう言えば最初にそんなこと言っていたよなぁ。
そもそも聖女自体がどんなことができるジョブなのかよくわからないのでスルーしていたのだが。
「……と、ということはユートさんは『ジョブ固有試験』は免除で良さそうですね!」
「ええ!? いいのか!?」
「はい、さっきの的当てでとんでもない実力をお持ちだということはわかりましたし、一般的なテイマーでない……つまり専門職ということであれば、改めて試験をする必要性が感じられません。そもそも冒険者試験を行なっているのは、新人冒険者の保護が目的ですからね」
「なるほど……というかその言い方引っかかるんだが、冒険者って結構危ない感じなのか?」
「そうですね……。ただ、無謀な挑戦をすると危ない、というだけでちゃんと地に足つけて活動されるのであれば大丈夫だと思います。ユートさんなら大丈夫だと思いますよ。聡明な方のように感じます!」
聡明なんて初めて言われたなぁ。
ちょっと照れてしまうじゃないか。
「私もユートは大丈夫だと思います! だって私でもなんとかなってるので!」
「確かに行き倒れても意外となんとかなるもんな」
「そ、それは言わないでくださいっ……!」
……と、まあ何はともあれ残るは最終試験——試験官との決闘か。
決闘なんて初めてだけど何をどうするんだろう?
ぼんやりと思っていると、受付嬢からの説明が始まった。
「最後の試験についてなんですが、ギルドが用意する試験官と戦っていただきます。試験官は上位ランクの冒険者が担当することになっているので、ユートさんは全力で戦ってください。……と、言いたいところなんですが」
「どうしたんだ?」
「いえ、その……状況を見て臨機応変にお願いしますね! 冒険者の方を殺さないようにお願いします! もちろんそれなりの冒険者を付けますが!」
ええええ!?
それはさすがに過大評価しすぎじゃないか?
俺は実戦経験なんて……さっきちょろっと弱い魔物を何匹か倒したくらいしかない。
ベテラン冒険者はもっともっと強いんだろうし、そこまで言われるほどのことなんだろうか?
「私も相手の冒険者が気の毒なので、かなり強い人でお願いしたいです! 新人だからと言って舐めてかかる人はダメです!」
レーナまで!
「……ということで、ちょっとお時間かかるかもしれないんですが、よろしいでしょうか? もしかするとタイミングによっては明日に持ち越しということになるかもしれません……」
「え、ああ。都合がつかないなら仕方ないし、それは大丈夫だよ」
幸い、レッドが取ってきてくれた食べ物はあるし、一晩くらいどうにでもなるだろう。
ここで待っているのもアレなのでギルドの施設内に戻ってゆっくり待っていようかと思っていたところ——
「物凄い音がしたから何事かと思って来てみれば……なるほどな。おい、待たせる必要はないぞ。俺が相手になろう」
「ギ、ギルドマスター!?」
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