第9話莉緒の家は

6月下旬の木曜日、放課後。

俺は、コンビニに寄ろうとしたら後ろから呼ばれる。

「美歌音くーん、コンビニ寄るの?」

「名波先輩、走らなくてもいいじゃないですか」

隣を歩くのは長い金髪で少しカールがかかっている女子、沢木川名波先輩。

彼女とは仲よくしてもらっている。宮戸先輩の友達でもある。

コンビニに入店して、スナック菓子コーナーで、彼女は悩んでいる。

「見かけたんだから話したくて。テスト勉強進んでる?美歌音君」

「えっーと、まあまあですね。名波先輩はどうなんですか?」

「これでも賢いほうだから大丈夫なの。おごってよ、美歌音君」

スナック菓子の袋を抱えながら、ねだる彼女。可愛らしい。

「いいですけど、そんなに食べれるんですか。それなら数学教えてください、名波先輩」

飲料コーナーで紙パックの苺牛乳を手に取りカゴにいれる彼女。俺は缶コーヒー、紅茶とほうじ茶をカゴにいれる。

「友達と食べるの。そんなに点数とれないの、数学」

「そうなんです。中間テストは38点で、担任に怒られました」

「へぇー、意外だよ。美歌音君。日曜日空いてるから、家にきてよ。教えるよ」

「知らないですけど、名波先輩の家なんて」

「メールに住所送るからアプリで調べて来て」

会計を済ませ、彼女に袋を渡しコンビニを出る。

「いいんですか、教えても」

「いいの。また明日ね、美歌音君」

手を振ってから走り去る彼女。


「ただいま」

リビングに入ると、ソファでテレビを見ている妹と姉。

「姉さん、飲み物買ってきたけど。いらない?」

「「いるよっ」」

二人して息ぴったりにこたえる。

姉に缶コーヒーを、妹にほうじ茶を渡す。

「「あーとう」」

「母さんはまだなの」

「莉緒が作ってよ。ぺこぺこで死にそう~」

「お兄ちゃん、私もお腹ぺこぺこ。早く~」

二人して甘えた声で言う。

「帰ってきたばっかなんだけど、俺」

俺は、キッチンでおかずは何を作ろうか考え、冷蔵庫を確認する。

「手伝ってよ、姉さん」

「莉緒が全部してよ~嫌だ~」

姉は結局手伝わず、夕飯を食べる俺達。






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