第8話先輩と少し距離が縮まる
6月中旬に入ったある日の放課後。
体育館で部活をやっていた。
俺は、モヤモヤした気持ちが残っていた。彼女に謝った日から、彼女を避けている。俺から関わらないと言ったけど、彼女とすれ違うときがあり、何か言いたそうな顔をしている。それが気になっている。
彼女に謝った日以降の部活でやらないようなミスが続いていた。
「10分休憩しよー。水分とって身体休めよ」
楔先輩が呼びかける。
休憩にはいると楔先輩が声をかけてきた。
「最近、ミスが多いぞ。何かあったのか?前の真剣さが感じられないけど」
「すみません。楔先輩。気をつけます」
俺は、頭をさげる。
「悩みがあるなら聞くよ。もうすぐ大事な大会がある。最後なんだよ、次が。ミスで終わるようにはしたくないんだ。きりかえてほしい。そして、優勝できるよう、莉緒の力が必要なんだ。目の前のことに集中してほしい」
「ええっと。宮戸先輩のことなんですけど──」
「そう、か。すれ違うことがあったら、話しかけた方がいいと思う。言いたそうなら、話して頭をきりかえよっ。莉緒にとってきついかもしれないが。それが大事だよ」
楔先輩はそう言って、体育館を出ていった。
それができたら苦労しないんだよなぁ。
ああぁぁぁ、無理そうだなぁ。あれほど怯えられてるから、話聞いてくれるかな。
休憩が終わり、練習が再開する。
最終下校時間のチャイムが鳴る20分前には着替え、体育館を後にするバスケ部員。
楔先輩に一緒に帰ろうと誘われたが断る。
俺は、一人になりたくて教室に向かった。
椅子に座り、天井を見上げる。
宮戸先輩。宮戸先輩宮戸先輩──。
「何ですか、莉緒君」
横から、それも耳もとの近くではなく、したの方から名前を呼ばれた。
見上げていた顔を呼ばれた方に向けると、しゃがみながら、机にちょこっと手を置いて顔を机から見えるようにしていた宮戸先輩。
「えっ、ええー。なんでここに宮戸先輩が!」
驚きの声をあげた俺に小さく笑う。
「私を......呼んでるのが聞こえた、から」
「漏れてたのか、心の声が...もう大丈夫何ですか?宮戸先輩」
「う、うん...同級生の話を聞いて、気になったの。莉緒君の、こと。少しずつでもいいから、仲よくなり...たい、莉緒君と」
「そう言ってもらえて嬉しいです。傷つけるようなことはもうしません。こちらこそ、お願い...します。宮戸先輩」
差し出された手を俺は、握り握手を交わす。
「莉緒君、帰りませんか?一緒に」
「いいんですか?ありがとうございます。宮戸先輩」
俺は、宮戸先輩と一緒に帰ることになり、距離が縮まりつつあるのを感じた。
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