第7話怯え、震える先輩

月曜日の昼休み。

昼食を後回しにして、教室を飛びだし二年生のフロアに向かう。

宮戸先輩が、どこのクラスなのかは分からなかったので、近くの教室から探す。


窓側の席に座って、女子と話していた。

俺は、教室に入らず、扉の近くで大きな声で呼ぶ。

「宮戸先輩っ」

教室が一瞬ざわついた。宮戸先輩は呼ばれたことに気付き、俺の方に視線を向けた。

彼女の表情が強張っていた。そして、身体が小刻みに震えていた。

彼女と話していた女子が彼女の異変に気付き、優しく声をかけた。

「どうしたの。大丈夫?」

彼女は返事をしていたが聞こえなかった。

ふらつきながら、目の前に彼女が来てくれた。怯えていて、瞳もふせめがちで見てくれなかった。

やっぱ、俺のことを──。

「あの、宮戸先輩。少しだけ時間をくれませんか」

「......う、うん」

と小さく頷く彼女。


中庭のベンチに座ってから、謝罪する俺。

「この間の木曜日、泣かせてしまって、ごめんなさい。本当に悪気はなかったんです。そんなに傷付いているなんて、思ってませんでした。ごめんなさい」

「わた......しこ、そ。ごめ、ん...なさ...い」

か細く震えながら、謝る彼女。

「何で先輩が謝るんですか、俺が全面的に悪いんです。貴女を泣かせて、震えるぐらい怯えるぐらい、恐怖を貴女に植えつけたんです。本当にごめんなさい。謝っても許されないと思います。でも、俺には、貴女に何をすればいいか、分からないんです......もう、宮戸先輩には近づきません」

「あ......の、そこ、ま...で、は」

俯きながら小さな声で返してくれる。

「ごめんなさい、宮戸先輩。貴重な時間を削って、俺の話を聞いてくれて、ありがとうございます。では」

俺は、彼女に頭をさげてから歩きだす。

彼女の声が聞こえた気がしたが、顔を合わせることに気がひけた。


宮戸先輩があれほど怯えていたなんて思いもしなかった。

金曜日に休んだのは、やっぱ、俺に会うことを恐れて──。

俺は、何で──。



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