第5話楔先輩が後輩を叱る

俺は、泣きながら走り去っていく女子を姿が見えなくなるまで見ていた。

俺ってやつはバカだなぁ。たぶんもう、彼女には会えないだろう。

ああぁー、と頭を乱暴に掻く俺。

前から俺を呼ぶ声が聞こえた。

「おーい、美歌音」

「莉緒ーいくぞー。コンビニに寄ろう、二人とも」

那住敏樹(なずみとしき)先輩と楔野衣(くさびやえ)先輩だった。

「さっき、泣きながら走ってった子がいたな。って、どうした、美歌音。その顔」

「いえっ、何でも。那住先輩」

「ならいいんだけど...」

「あの子、前のバスケの試合にきていた子だよ。一個下の後輩だよ、名前は、えっとぉー」

「何でしってんすか、野衣さん?もしかして、知り合いなんすか」

「違うよ、その子の隣にいた子が呼んでるのを聞いて。それだけだよ、敏樹」

「一目見ただけで、すごいなー。野衣さん」

「莉緒。もしかして」

「あっと、その...そうです。泣かせるつもりはなかったんです。本当なんです」

俺は、楔先輩にあったことを包み隠さず話した。

楔先輩に叱られた。

最後にこう言ってくれた。

「女性には、優しくするんだよ」

と。


コンビニに寄った俺と先輩二人はいつも通りの会話をして、買うものを買って、家に帰った。


俺は、楔先輩から彼女の名前を教えてもらい、謝りにいくことを決めた。

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