第4話強い力で掴まれる腕
6月の上旬。木曜日。
放課後。
職員室の前を通ろうとすると、扉が開いて、出てきた人とぶつかった。
「ごご、めんなさ...」
「いってぇ、ぶつかん...」
二人とも、言いきることなく、顔を見つめ合う。
「さいあ──」
「はあ、今何て」
棘のある言い方をする男子だった。つい、思っていたことを口に出していた私。
最初に会った時と同じ声音で言われた。
気に障ったようだった。
「ごめんなさい。何でもっ」
彼から離れようと、下駄箱に向かって走ろうとした瞬間、腕を掴まれた。
すごく力が強く、振りほどけない。
「いっ、いたっ、痛いです。どうか...放して、ください」
最後の言葉が弱々しくなる。泣きそうになる私。
「わ、悪い。ついカッとなって。泣かせるつもりは、なかったんだ」
彼は私の腕を放し、謝る。
私の頬を伝った涙が床に落ちたのを見た彼から出た謝罪の言葉がそれだった。
私は、彼を見ることができなくて、下駄箱まで走っていく。腕で涙を拭いながら、廊下を走る。男性教師に注意をされたが止まることなく、走った。
下校中に私は、彼に掴まれた腕を見た。少し痕があった。
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