第43話でしたら謝りますよ?

そう言いながら私を見つめるマダムの顔は『良いおもちゃを見つけた』という表情を隠そうともしない。


まるで、私が歯向かってきた所で埃を払い除けるかの如く簡単に捻り潰せるだけの権力を持っているんだと言っている様に見えるし、実際にそうなのであろう。


正に私が想像した像をそのまんま形にして、更にタバコの灰で煮詰めた様な人物だ。


先生が遠回しに謝罪をする様に言ってくるのも分かると言うものである。


常識が通用しないというだけではなく差別的かつ権力も持っている様な相手なのだ。


正に生きる厄病神、触ったら最後不幸が訪れる類である。


故にこの厄病神を退治しようとする者は消え去り、自分がルールだと更に態度が横柄に成っていくのであろう。


そして出来上がったのが目の前の化け物である。


「あら、答えないって事は当たりなのかしら?まぁ上流階級の方が貧乏人と結婚する事など所詮は夢物語。結局は貧乏人は仲良く貧乏人と結婚するのでしょう。違いまして?


私が一向に返事をしない事を自分の予想が当たっていると解釈した小太りマダムは顔をテカテカにしながら実に嬉しそうな顔で見下してくる。


最早この場は子供の喧嘩についてではなく、いかに私という新しいおもちゃで遊ぶかに小太りマダムの思考は変わってしまっているのであろう。


恐らく、以前の私ならの関わりたくない一心で野良犬にでも噛まれた様なものだと適当にヘラヘラと笑って平謝りをしていた事だろう。


恐らくそれが最も最善な方法なのかもしれない。


一時間も経たずに真奈美と一緒に帰れたのかも知れない。


でも今の私はここでこの小太りマダムとやり合う事などぬるま湯の温泉だと思える程の地獄を味わって来たのである。


そして何よりも人間の屑具合で考えれば私の方が圧倒的に屑なのである。


目の前で喚き散らす小太りマダムなど丸焼きにして食ってやるわ。


私を相手にした事、真奈美を馬鹿にした事、そして何よりも元旦那の悪口を言った事をこの小太りマダムには後悔させてやる。


そう覚悟を決めた瞬間、先程まで感じていた恐怖心など嘘の様に消え去っていた。


「ブヒブヒ、ブヒブヒと………」

「何ですの?やっぱり貧乏人は日本語も喋れないのかしらね」

「さっきからブヒブヒとうるさいですね。ここは人間の子供を預かる施設ですので豚は場違いですので出て行ってくれませんかね。そもそもことの発端は貴女の子豚が私の娘に石を投げて来たのが原因でしょうが。石を投げて叱る事もしないとは頭がおかしいんじゃないんですかね?あぁ、豚だから人間様とは子供の育て方が違うとかですかね?でしたら謝りますよ?」

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