第42話小太りマダム
「そ、それは大変っ!ちょっと店長に早上がりできるか聞いてみるわねっ!」
深刻そうな表情で聞いてくるパートの先輩へ事の顛末を説明するとまるで我が事の様に身振り手振りで店長へ、少しだけ大袈裟な表現でもって伝達ゲームの様に伝わっていく。
「少し大変な事になっているみたいだね。今日はもう上がって良いから行っておいで」
そして私は店のご厚意で早上がりさせてもらえ、保育園へと自転車を走らせていく。
その間はどんな理不尽な事を言われるのだろうという想像からくるストレスと、早くその場から真奈美を救わなければという使命感にも似た感情がないまぜとなり、それが気持ち悪さとなって私を襲って来る。
そんな感情を抱えながら保育へと到着し、自転車を駐輪場へ止めると小走りで職員室へと向かう。
そるとそこには高そうな帽子に高そうな毛皮を着ている小太りの女性が、先生へ詰め寄っている光景が見えた。
その光景に今から面倒臭い事になるぞと思ってしまう。
保育の先生からのお電話からある程度面倒臭い事になるとは思っていたのだけれども、どうやらその予想ははやり的中していたみたいである。
気を引き締めてかからないとこちらが負けてしまいそうだと一気に気を引き締め戦闘モードへと意識を変えていざ決戦の場である職員室へと向かう。
「すいません、遅れました。うちの真奈美は大丈夫なのでしょうか?」
その一言を言いながら職員室へと入って行くと、その場は一瞬にして時間が止まったかの様に、口うるさくしていた小太りマダムを含めて職員室にいる人全員が私の方へと振り向くと一瞬固まってしまう。
確かに急いで来たので髪はボサボサだしパートの衣服も着替えずに来たため場違いなのは分かるのだが、流石にこんな反応をされては羞恥心が芽生えてくる。
「あら、あらあらあら」
そんな私の姿を見た小太りマダムは鴨がネギを背負って来たとばかりに嬉しそうな表情へと変わり私の方へと向かってくる。
「まさか貧乏人の子供が私たち上流階級であるわたくしの子供を怪我させたと?これは如何なものかと。それになんですの?開口一番わたくしの坊ちゃんの心配では無くてネズミの様に放っておけば勝手に増える貧乏人である自分の娘の心配とは、まるで立場を分かってらっしゃらない。これだから貧乏人なのよ。で、おたくの旦那さんはどちらに?どうせわたくしの夫と違い暇を持て余してらっさるでしょうし来ているのでしょう?あなた同様に貧乏人の臭い匂いを漂わせながら」
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