第13話それは俺も同じ

「お風呂、入ったよ」

「おう。じゃぁもう夜も遅いし寝るか……って、おいっ!?何で裸なんだよっ!?」


そしてわたくしは裸のまま高城へとしなだれかかる。


どうせやる事やるのならば早くやって早く終わらせて、そして真奈美と温かい布団で今日はもう眠ろう。


「ちょっと、静かにしてよ。真奈美が起きるでしょう」

「そ……そうだな、すまん。っじゃなくてだなっ!」


しかし高城は初めは紳士を気取っているのかなかなか乗ってこない為だんだんとじれったくなってくる。


「アンタも私もアラサーにもなって、流石にいい大人の男性がいい大人の女性を自分の家に呼ぶ事が、どういう事であるのかくらい分かる程には人生経験を積んで来てるわよ。ほら、恥ずかしいのか紳士ぶっているのか分からないけれどもさっさとやる事やってさっさと寝るわよ」

「いい加減にしろっ!!」


そういうと私は高城の股間へと手を伸ばした瞬間、気がつけば私は高城に左頬を叩かれており、叩かれた左頬が熱をもちじんじんと痛み始める。


「た、高城?………何で?」

「真奈美の顔を見ても、何でって思うのか?お前は。自分の母親が男性に媚と性を売り、そのおこぼれとお情けのもとで部屋に住まわせて貰ってると知ったら真奈美はどう思う?子供はお前が思っている以上に知恵が回るし大人以上に人間関係を読み取るもんだ。そうなれば『自分も母親の様にこの男に媚を売らないといけないという思いをさせるのか?」

「…………………」


高城の言っている事は正しい。


正論である。


でもそんな言葉は所詮は綺麗事だ。


私は、媚でも性でも良い。


高城が簡単に私達を追い出さないという安心感が得られるのであれば。


「じゃぁ、………ばいいのか………てよ」

「すまん、聞こえなかった。何て言ったんだ?」

「じゃぁ、どうすれば良いのか教えてよっ!不安なんだよ………今私達は高城に見捨てられたら他に頼れる人はいないから………」


卑怯な事を言っている自覚はある。


でも、口が止まらなかった。


「全く………だったらそう言えよ。俺もお前もエスパーじゃないんだから言わないと伝わらない事だってある………ってそれは俺も同じだな。むしろ偽善で隠しているんだから余計にタチが悪い」


高城はそういうと一度言葉を止めて深呼吸をする。


「俺、役に立たないんだよ」

「え?………どういう意味?」

「そういう意味だよ。立たないんだよ。やりたくても出来ないんだよ、俺は。あの日から………お互いの両親にも挨拶までし終わって、結婚式のプランとか一緒に考えていた彼女に浮気されていたと知ったその時から」

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