第12話頭の中で繰り返し流れて消えてくれない
そして高城がお風呂へ入ってから数十分後、パジャマに着替えた高城が私にお風呂へ入るように促してくる。
「次入って良いぞ。普通に入る分ならばお湯の事とか気にする必要はないからな。流石に何十分もシャワー出しっぱなしとかはダメだが」
「わ、分かった。お風呂入って来るね。ありがとう」
あー、ダメだ。
意識しないように意識すればするほど、より一層意識してまい、上ずった声で返事をしてしまう。
絶対緊張している事が高城に絶対ばれた。
その恥ずかしさも相まって私は逃げるようにお風呂場へと向かう。
「落ち着け………落ち着け」
そして脱衣所につくと今度は口にも出して落ち着くようにと半ば自己暗示に近い事をしようとするのだが、私は今異性に求められておりその異性の部屋にある脱衣所で衣服を脱ぎ裸になっていると思うともうどうにもならないくらい生物としての本能から興奮してしまう。
しかしながらその生物としての本能からくる興奮と思った瞬間に今まで感じていた強い興奮は収まり不思議と落ち着けるようになった。
生物としての本能からくる興奮。
それによる営みなど不倫の行動原理そのものではないか。
そこにあるのは愛だの恋だのと言った感情ではなく、愛だの恋だのと思っていた感情は蓋を開けてみればスリルと欲望、そして動物としての本能とそれらによる快感と中毒性でしかなかった。
だからこそ元夫にばれて離婚した私の傍らにはあの時あんなにも、旦那以上に愛していると思っていた不倫相手ではなく高城がいるのだ。
真実の愛と言うのであれば今私の隣には不倫相手がいるはずなのにいないという事は、そういう事だったのであろう。
その事を思い出した瞬間、今この状況で興奮している私に、私自身が心底嫌悪感をかんじてしまい、そういう気分など吹き飛んでいった。
恐らく、普段から意識をしていないと私はまた同じ過ちを冒してしまうのであろう。
不倫や浮気は麻薬と同じ。だから不倫や浮気をする人は治らない。
こういう言葉はよく耳にするし、実際不倫をしていた当時は私にそう親身になって止めるように言ってきてくれた友達だった人も何人かいたのだが鼻で笑って聞き流していた。
今ならば、まさにその通りであると言える。
一度覚えてしまった快感は、人間忘れる事などできない生き物だと思い知らされる。
『麻薬中毒者は死ぬまで禁欲か死ぬまで麻薬付けのどちらかだ』
昔テレビで言っていた言葉が私の頭の中で繰り返し流れて消えてくれない。
そして私はお風呂からでると高城のもとへと向かう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます