第10話男性一人が住んでいる部屋であるとは思えない
鍵を開けて中へ入って行く高城に続き、私も遠慮がちに部屋の中へと入って行く。
部屋の中へ入ると空気が何だか重たい気がした。
「電気つけるから少し待ってろ」
そう言って高城が電気をつけてくれてその空気の重さの理由が分かった。
「高城………あんた………」
「そんな顔すんなよ。別にお前のせいじゃ無いんだから気にする意味も無いし逆にこっちが気を使うわ」
部屋の中はベッドと目覚まし時計がある部屋が一部屋あるだけである。
後は冷蔵庫に炊飯器、洗面所には洗濯機に歯ブラシなど。
コレで見える範囲で目に付くものは終わりである。
ぱっと見で両の手の指の数よりも少ない数しか置かれていない私物に、流石の私ですら高城の事が心配になってくる。
その他には何も無く、到底男性一人が住んでいる部屋であるとは思えない間取りであった。
「一応来客用の布団はあるからそれを使ってくれ。あと隣に部屋は何も無い状態だし自由に使っても良いからな」
そう言われてベッドが唯一が置かれた部屋その右隣に隣接する様にある部屋には高城の言う様に本当に何も無くひんやりとした空気が流れて来ている様な、そんな錯覚すらしてしまう。
部屋の並びはL字となっており真ん中の空いたスペースにトイレとお風呂があり玄関側にキッチンがある作りとなっていた。
因みに収納スペースとして押入れがあるのだが、その押入れは私達にとあてがわれた部屋にしか無く、中には来客用の寝具として寝具が一式と高城の洋服が入っているアクリルタンスあるだけである。
「流石におかしいと思うか」
「そりゃね………テレビもパソコンも、漫画もゲーム機も、娯楽も何も無いじゃない。まるで寝るだけの部屋………みたいな」
「まぁ寝るだけの部屋だしな。そもそも部屋に極力物を置きたくないと必要最低限の物以外は捨てて行ったらこうなった」
「こうなったって………」
あの時高城が言っていた『生ゴミを出すのが面倒臭い、洗い物が面倒臭い、料理作るのが面倒臭い』の本当の意味が分かった。
高城は料理をする事により見える所に物を置きたく無いのであろう。
料理を作るとなると洗い物が出るし食材の数だけ生ゴミも出る。
炒め物する為にはフライパンが必要だしお湯を沸かすには鍋が必要となる。
汁物にはお椀、ご飯にはお茶碗、おかずやパンなどなど料理に合ったお皿も必要となる。
「ま、まさか………」
そう思いキッチンの下の収納棚を開けてみると袋麺を煮るのに丁度いいサイズの鍋が一つ。
食器棚を皿が一枚も無くお箸が一膳とコップが一個、来客用であろう紙皿に紙コップ、割り箸があるだけだ。
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