第9話そう思えるだけでかなり心が軽くなった気がした
そして私は小さな違和感を抱きつつも高城との何気ない会話を懐かしむのであった。
◆
「取り敢えず一人暮らしではあるんだが2DKで部屋は二つあって一部屋使ってないからそこを使ってくれ」
真奈美をおんぶしながら高城の部屋がある二階へと階段を上がっていく途中に高城が一部屋開いているから使って良いと言ってくる。
そんな高城の手元には先程買った大量の商品が一纏めにされ入っている大きなエコバッグを軽々と持っており何だかんだで男性なんだと思ってしまう。
「分かった。背に腹は代えられないから今は有難くその開いた部屋を使わせてもらうね。正直言えば高城がダメなら公園か駅で寝泊まりも考えていた所だった本当に高城には感謝してる」
「そんな所だろうと思ってたから追い返せなかった節があるからな。どうせ女性支援センターという所があるのも知らないだろうしな」
「…………何それ?」
「そうだな、さまざまな問題から女性の保護を目的としてて一時保護もしてるしその場合は子供と同じ部屋にしてくれる。家賃が安いNPO法人が運営する仮住まいも探してくれたり、収入がなくなる場合は生活保護の需給の手助け又は仕事の斡旋などだな。後はググれ」
高城の言葉を聞き、私は本当に何も知らないんだなと痛感させられた。
もし高城がダメだった場合は野宿しながら性を売る仕事で日銭を稼ごうかとも思っていたくらいである。
別段その仕事をしている人たちを見下しているわけでも無いし、またその仕事を誇りをもってしている人たちもいるだろう。
けれども世間の目というのは必ずしも皆が皆私と同じ考えという訳ではないし、何しろ私のせいで娘が周りからそういう目で見られるという事に関しては想像するだけで、偏見であると分かっていても娘に対して不憫でならず申し訳なさと罪悪感を感じてしまう。
不倫してばれて離婚した私が言える立場ではないのは分かっているのだが、だからこそ今以上に不憫な思いはさせたくないと強く思う。
取り敢えず、高城に追い出されたら教えてもらった通り女性支援センターを活用しようと、そう思えるだけでかなり心が軽くなった気がした。
「ありがとう。後で絶対調べておく。そして高城に追い出されたときはソコを頼ってみるよ」
「よっぽどの事が無い限りは追い出さねーよ。まぁ、一応頭の片隅にでも入れておいても損はないだろう」
そして私は高城に聞こえない声で「ありがとう」と呟く。
「さて、何も無い部屋ではあるのだが………」
「お邪魔、します」
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